【エスト株式会社インタビュー】災害時の業務をITを活用して支援するシステム
病院機能が著しく低下する恐れがあります。
それを防ぐために
主たる病院の前には緊急医療救護所が設営されるのですが
発災直後の緊急医療救護所では医師や薬剤師などのヒトや
医薬品や衛生用品などのモノが不足する中で
多くの傷病者に対応することは容易ではありません。
そんな災害時のヒト・モノの問題をITを使って
解決しようとしているのがエスト株式会社です。
はじめに
災害が発生した際に被災者の健康を維持することは極めて大切です。被災者の健康と言われると病院をイメージする人が多いかもしれませんが、病院以外に救護所も被災者の健康を維持するための大切な機関になります。
ただし救護所における災害時対応は現在多くの問題が存在しており、それらの問題をITの力で解決しようとしているベンチャー企業がエスト株式会社です。
今回はそんなエスト株式会社の代表取締役である辻田さん、同じくエスト株式会社の取締役である高尾さん、江戸川区薬剤師会の井手さんにインタビューをしてきました。
災害時の救護所における問題点
災害時には普段の何気ない生活の中で当たり前に使えていたものが使えなくなることがあります。電気・ガス・水道・通信などのライフラインはもとより、病院機能も著しく低下することがあります。
そのために被災した地域の自治体が中心となり医療救護本部を立ち上げるとともに、医療関係団体と協力し多くの傷病者に対応するために、病院の近隣に緊急医療救護所が設営されます。救護所における医療の提供については地域の医師会災害対策本部が、そして薬の提供については薬剤師会災害対策本部が中心になって行っていきます。
しかし、災害時における災害対策本部では、安否確認に始まり、救護所への参集確認、救護員の調整、医薬品の確保や調整、医療機関や薬局の被災状況の確認などやらなければならない業務は膨大にあり、限られた人員で全ての業務を迅速かつ正確に行うには限界があります。
また、災害対策本部以外にも被災者支援を実際に行う現場の救護所においても現状では、傷病者のトリアージや、軽症者への応急処置、支給された医薬品の管理や投薬業務、不足する医薬品への対応や、救護活動を引き継ぐ為の報告書の作成など災害時には多くの業務や課題が発生しているのが現状になります。
災害時の救護活動者を守るためのシステム開発
このような課題を解決するために、エスト株式会社では災害時の救護活動者を守るために「eST-aid」という災害時に救護活動に従事する方を支援するシステムを開発しました。
eST-aidは大きく3つのシステムによって構成されています。1つ目は、三師会災害対策本部を支援する「aid-Top」です。
「aid-Top」では会員医院や薬局の開閉状況や、各救護所における医薬品の種類や数量などの情報をはじめ、救護員の活動人数や救護所の活動状況など、あらゆる情報をリアルタイムに確認することができます。
また、これまで手書きで作成していた書類についても、東京都福祉保健局が作成している「災害時における薬剤師班活動マニュアル」に記載されている様式にてシステム内で作成から提出まで行うことができるので、時間効率を飛躍的に向上させることができるという特徴もあります。
このように「aid-Top」を活用することによって災害対策本部が災害時に現状苦労している業務量を大幅に削減することができます。
eST-aidのシステムの2つ目が、救護所の活動救護員を支援する「aid-Station」です。「aid-Station」は災害時に実際に傷病者の方への対応を行う救護所での業務を効率化するものです。
具体的には救護員の時間管理や、医薬品の入出庫管理、リスト作成など医薬品を整理したり、救護所で医薬品が不足した際には近隣の薬局から医薬品を調達するために周辺薬局の検索を行ったり、調剤録やお薬手帳用のシール作成などを行えます。
eST-aidのシステムの3つ目が、それぞれのクリニックや薬局で復旧活動を行う方を支援する「aid-employee」です。「aid-employee」ではクリニックや薬局の従業員の安否確認を行ったり、クリニックや薬局の被災状況の報告や開閉情報の発信を行うことが出来ます。
また、「aid-Station」及び「aid-employee」で更新された情報を基にして、一般の方が災害時にどこで救護所が開設されているのかをリアルタイムで確認したり、医療機関・薬局の開閉状況を確認したりすることもできます。
このように「eST-aid」では、三師会(医師会・薬剤師会・歯科医師会)災害対策本部・救護所・医院/薬局のそれぞれを災害時に支援するためのシステムがワンストップで備え付けられています。
システムの根幹
このシステムは江戸川区薬剤師会と共同開発されております。江戸川区薬剤師会では、東日本大震災の際には会長自らが2度支援に入っており、また熊本地震の際にも支援に入ったメンバーもいる他、日本DMAT隊員もメンバーにおり、これまでの災害支援の経験・知識を全て取り入れたシステムということも一つの特徴になります。
今後も現場の声を聞きながら更なるシステムの改良が進められ、災害時に使えるシステムとして普及していくことが期待されています。今月中にも自治体が運用するシステムが完了することから、自治体と地域の三師会の4極で情報を一括管理できるシステムに改良されるとのことでした。
おわりに
災害や防災に関する会社の人たちには色々とお会いする機会がありますが、その中でもエスト株式会社さんはスピーディーに物事を進めて、より現場のニーズに寄り添って問題を解決しようという姿勢の強い会社のように見受けられました。
災害時には自治体や医師・薬剤師・歯科医師の方々は被災者を支援するために重要な業務を担っていますが、その業務をITの力で支援するにあたって「eST-aid」には期待が寄せられています。