2011年3月11日に東北地方で大地震が発生し
死者・行方不明者は1万人を超える大惨事となりました。
戦後の災害でここまでの被害を出したのは初めてであり
東日本大震災は日本全体に大きな衝撃を与えました。
一方でこの衝撃はスタートアップ業界にも波及して
災害時に使えるITサービスが何かできないかと各社が開発を進めました。
今では誰もが使う“LINE”のサービスも実はこの衝撃の中で生まれました。

はじめに

防災業界で働いているといろんな防災に関するITシステムを目にします。官公庁、防災関連機関、大学機関などでは災害大国である日本において災害による被害を少しでも減らすために、多額の費用をかけて災害や防災のシステムを開発しています。

災害が発生した時に実際に災害対応を行う自治体や国が使うITシステムでは、被害状況を把握するシステム、それぞれの被災者の被災情報を管理するシステム、災害対応で担当者が連絡を取り合うシステムなどあります。

災害で被災した家族や企業が使うITシステムでは、安否確認サービスや災害用伝言ダイヤルなどがよく使われるシステムとしてあります。

ここで挙げたサービスはあくまで一例であり、日本には災害による被害を少なくするために多くのITシステムが活用されています。しかし、おそらく日本で最も多くのユーザーによって使われている“防災ITシステム”はLINEなのではないかと思います。

2018年6月に発生した大阪府北部地震でも多くの被災者がLINEによってお互いに連絡をとり合い無事を確認しました。

LINEは東日本大震災で情報連絡手段が途絶えた経験がきっかけで生まれた

LINEは、東京で、東日本大震災によって、家族や友人など大切な人と電話がつながらず安否確認が取れないという経験をした社員たちによってつくられたサービスだといいます。電話回線が繋がらない場合でもインターネットを通じてスマートフォンでいつでもどこでも簡単にコミュニケーションができるアプリとして、発災から3ヶ月後の2011年6月にLINEは誕生しました。

その後LINEを活用するユーザーは爆発的に拡大し、2018年3月時点で日本国内の月間アクティブユーザー数は7500万人、台湾・タイ・インドネシアを加えた主要4カ国では1億6500万人へと成長しました。

今では“連絡を取り合う手段=LINE”であり、実際に僕の場合でも携帯番号は知らないけどLINEを使って連絡を取り合っている友達が大半です。少し大げさに言えば、連絡を取り合うのに携帯番号は不要になったとも言えます。

災害時におけるLINE活用方法:家族・会社編

平時にLINEを活用することは当たり前になってきていますが、平時に使っている機能をそのまま災害時にも使うことができます。

まず大前提として、災害時には電話が使えなくなることがあります。人々が一斉に電話をかけ集中すると、トラフィック制御装置がそれを制御するためです。そのような時のために“災害用伝言ダイヤル171”というものも存在はしているのですが、平時には使わないサービスなので、そもそもどうやって使えばいいのか分からず、災害でテンパっている状態では使いにくいという課題があります。

家族みんなでLINEグループを作ればそれが緊急連絡簿になる:LINE HPより画像引用

しかし、LINEであれば電話回線ではなくてインターネット回線を使用するために、被災して電話が繋がらなくてもインターネットに繋がっていれば、LINEの音声通話・ビデオ通話やテキストメッセージの送信などができます。また、LINEは平時から多くの人が使っており、災害時にも平時と同じツールを使って連絡を取り合うことができるので、使い方が分からないという状況にはなりません。

LINEには音声通話・ビデオ通話やテキストメッセージを送る以外にも、便利な機能がいくつかあり、それらは災害時にも応用が効くので、いくつかご紹介していこうと思います。

災害時におけるLINE活用のコツとしては、まずはグループ機能があります。LINEを普通に使うと1対1での連絡になりますが、グループ機能を活用すれば複数人と同時に連絡を取り合うことができます。

例えばこのグループ機能を活用して、家族全員で“家族グループ”を作成しておけば普段は家族間のちょっとした連絡の取り合いに使うことができますし、災害時には緊急連絡簿のように、一つのコメントで家族全員に安否情報を伝えることができます。

外出先で自分がどこにいるのか正確な住所が分からなくてもワンクリックで居場所を伝えることができる:LINE HPより画像引用

会社の場合には、会社単位や部署単位で“会社グループ”を作成しておき、平時は会社のコミュニケーションツールとして活用し、災害時には緊急連絡簿のように、一つのコメントでグループに入っている会社の人全員に自分の安否情報を伝えることができます。

この他にも自分の居場所を地図で知らせることができる位置情報送信機能を使えば、外出先で被災して正確に自分の居場所を伝えることが難しい時でも、ワンクリックですぐに自分の住所を地図に落とし込んで送信することができます。

また、LINEは画像の送信もできるので、スマートフォンのカメラで被害状況や避難案内の張り紙を撮影して共有することもできます。

災害時に効果的にLINEを活用するコツとしてはこの他にも、ノート機能、アナウンス機能、ステータスメッセージ機能、LINE災害連絡サービス、などいくつもの機能があります。

これらの機能についてはLINEマンガにて「マンガでわかる緊急時のLINE活用法」が公開されていて分かりやすく紹介されているので、興味がある人はぜひ見てみてください。

災害時におけるLINE活用方法:自治体編

次に実際に災害対応を行う地方自治体におけるLINEの活用方法について見ていこうと思います。地方自治体のLINEの災害時活用に関しては、個人的にかなり重要だと思うのでしっかりと書いていこうと思います。(今回、僕がLINEについて記事を書こうと思ったのは、この部分を地方自治体の人に伝えたいと思ったからです)

災害対応にSNSを活用しようという動きは以前からありました。内閣府からも「災害対応におけるSNS活用ガイドブック」というガイドラインが出ており、災害時にSNSをどう活用すればよいのか迷っている自治体の人は参考にすることができますし、もしかしたらこのガイドラインが出されたのは、しっかりと災害対応でSNSを使えよという国からのメッセージなのかもしれません。

ただし、実際にガイドラインを見れば分かるのですが、これはSNSというよりもTwitterに特化したガイドラインになっており、災害情報の発信や被害情報の受信にどうTwitterを活用するのかが書かれています。(余談ですがTwitterで災害情報を収集する際にはDISAANAというサービスがオススメです)

このガイドライン効果のためか、日本で災害時にSNSを活用するという話になると、みんながTwitterの話をし始めます。実際にTwitterは受信と発信の両方の機能がついており、災害対応で便利ではあるのですが、総務省が公表している「情報通信白書」によると日本で一番使われているSNSはLINEであり、できるだけ被災者に災害情報を発信したいならば自治体はLINEの活用も検討すべきなのではないかと僕は思います。

受信設定から自宅の学区を選択することで自分の住んでいる地域の防災情報を受け取ることができる

では具体的にLINEを災害対応にどう活かせば良いのかについて書いていこうと思います。LINEの災害対応への活用は大きく「被災住民への情報発信」と「担当者間でのコミュニケーション」に分かれます。

ご存知のように熊本市は2016年4月に熊本地震で大きな被害を受けており、いかにして防災体制を構築するのかは大命題になっています。「被災住民への情報発信」を見越し、熊本市とLINEは「情報活用に関する連携協定」を締結し、協力しながら情報発信を行っています。

LINEで熊本市のアカウントを友達追加すると、まずは校区を設定します。そして「復興」「イベント」「しごと」「障がい」「高齢」「子育て」「健康」の中から自分が情報を受け取りたい情報を選択します。

そうすることで、平時には自分の住んでいる校区での催し物や生活関連情報を受け取り、災害時には校区に応じて避難所の情報や災害情報を発信することができます。

LINEを活用した被災住民への情報発信では、事前登録情報から校区を絞ることができるのでピンポイントで情報発信ができることと、平常時から住民が使っているツールで災害情報を発信できるという点が良いなと思いました。

熊本市ではLINEを活用した防災訓練を行なっている:LINE HPより画像引用

「担当者間でのコミュニケーション」では熊本地震の際にも、熊本市の職員が自発的にLINEで災害対応の担当者間連絡を行なったり、災害派遣医療チームなども災害救護を行う際に不足資材の連絡などでLINEを活用したり、避難所運営でも避難所間の連絡手段として使われたそうです。

熊本市では2018年4月に職員約1万人と住民約3000人が参加する災害対処実働訓練が行われましたが、その中で熊本市中央区対策部と44箇所の避難所担当職員を合わせた約120名でLINEグループを作り、避難所の安全点検結果や避難者数などの情報収集・伝達および避難所運営が行われました。

このようにLINEを自治体の災害対応にも活用しようという流れができつつあり、今後はさらに普及していく可能性があります。

ITの力でどうすれば減災をすることができるのか

冒頭でも申し上げましたが、東日本大震災には民間企業、ボランティア団体、個人の有志など多くの人が衝撃を受け、ITの力を活用して災害による被害を減らすことができないかと様々なITサービスが生まれました。

既に手持ちにあるカードを組み合わせて、災害に対する問題を解決するためのソリューションを見つけることが重要なのかもしれない

東日本大震災から7年経った今、かつて大量に作られたそれらのサービスにアクセスをしてみてもリンクが切れてアクセスできない(=サービスが停止している)ものばかりでした。

おそらくLINEは東日本大震災に大きな影響を受けて作られたITサービスの中では最も多くの人によって利用されているサービスですが、今後どうすればITの力で減災をしていくことができるのでしょうか。

その一つの答えとしては、あまりにも大掛かりなシステムを一気に開発しようとするのではなく、既に手持ちにあるカードを組み合わせて、災害に対する問題を解決するためのソリューションを見つけることが重要なのかもしれません。

おわりに

ちょうど僕が大学生の頃にLINEのサービスは生まれて、それまでの電話やメールで連絡をしていた状況から一変し、誰もがLINEを使うようになって生活が一気に変わった瞬間のことを今でも覚えています。

災害に関するニュースでマスコミが「SNSを活用して被災者が救われました!」という報道を見ることがありますが、実際に自治体の防災担当者と話をしていると「SNSは情報が大量すぎて扱いにくいし、情報の信憑性も分からないし、マスコミが騒いでいるほど活躍はしない」という本音の意見もよく聞きます。

しかし、よくよく話を聞いて見ると、SNSという一つの言葉にいろんなサービスがごっちゃになっており、数多くある一つ一つのSNS(LINE、Twitter、Facebook、Instagramなど)をそれぞれしっかりと吟味してはいないことが多いように思えます。その中で今回はLINEを災害時にこういう風に活用することができるということを伝えたいと思い記事を書かせていただきました。

災害対応ではいろんなITサービスが存在していますが、その中でもLINEは活用の幅が広いのではないかと個人的には思います。

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