災害から文化遺産を守るための防災対策について

災害が発生した際には、時に多くの負傷者が発生してしまったり、建物やインフラ施設が壊れてしまったりすることがあり、人的にも経済的にも被害が発生してしまいます。しかし、災害によって被害を受けるのはこれだけではありません。あまり注目されることはないですが、時に災害は文化遺産に対しても被害をもたらすことがあります。
今回はそんな災害が文化遺産に与える影響について、災害から文化遺産を守る基本的な考え方、災害から文化遺産を守る具体的な方法、などについて、内閣府が公表している「地震災害から文化遺産と地域をまもる対策のあり方」を元に書いていこうと思います。

災害から文化遺産を守る基本的な考え方

行政には大規模な地震などから文化遺産を守るために必要な対策を行う必要があるという大前提のもとで、災害から文化遺産を守る基本的な考え方について見ていこうと思います。

文化遺産関連者への防災意識の普及

文化遺産の所有者・管理者に対して文化遺産を守る上で災害対策を行うことの重要性を説明し、防災活動の推進を図る必要があります。

自主防災組織の活動支援

文化遺産の所有者・管理者および地域住民が自主的な防災活動を行える組織づくりを働きかけ、支援する必要があります。

地域防災計画への文化遺産の反映

文化遺産については、震災時の行政職員の配置・行動などについては地域防災計画の中で出来る限り明確化し、的確な対応が図れるようにしておく必要があります。

未指定の文化遺産の調査

未指定の文化遺産をあらかじめ調査・把握して、災害時の消化活動・文化遺産の搬出・保全活動の鳳凰に反映させるとともに、災害後の復旧。復興の際に文化遺産の喪失を避ける必要があります。

参照記事
災害エスノグラフィーとは?災害現場のリアルな声から学ぶ

災害から文化遺産を守る具体的な方法

災害から文化遺産を守る具体的な方法についてはハード対策とソフト対策の両方の側面から行っていく必要があります。

災害から文化遺産を守る具体的なハード対策

災害による文化遺産への被害は、地震による倒壊や火災による焼失によるものがほとんどです。建物の倒壊防止を行うにあたっては、可能な範囲で構造補強を行い、倒壊のぼうしに努める必要があります。美術工芸品などの転倒・転落防止についても地震の際に損傷しないための対策を行う必要があります。
火災による焼失を防ぐためには、各種消化施設を整備する必要があります。また建築物の耐震化・不燃化についても検討が必要です。
この他にも、文化遺産には多くの観光客が訪れていることもあるので、地域住民および観光客を考慮した避難路や避難場所を確保する必要もあります。

災害から文化遺産を守る具体的なソフト対策

災害時には出火防止に努めるとともに、迅速・的確に消化活動・文化遺産の搬出・保全活動が行えるようにあらかじめ検討を行い、日頃から訓練を行う必要があります。
また、自主防災組織と消防機関が連携した日頃からの訓練の積み重ねによって地域の防災力を向上させるとともにマニュアルの整備を行う必要があります。
以上、災害が文化遺産に与える影響について、災害から文化遺産を守る基本的な考え方、災害から文化遺産を守る具体的な方法、などについて見てきました。
災害時には人的な被害や経済的な被害に目が行きがちですが、今までに受け継がれてきた文化遺産を保護することも大切な災害対応であり、文化遺産の防災対策について考えていく必要があります、

参照記事
首都圏における大規模水害の被害想定とその対策について

参考サイト▪︎内閣府「地震災害から文化遺産と地域をまもる対策のあり方」