水防災意識社会とは?大規模氾濫に対する減災のための治水対策

平成27年9月に台風18号によって関東・東北豪雨災害が発生し、栃木県を始めとした各地で記録的な豪雨となりました。この豪雨によって鬼怒川が氾濫し、常総市は市の1/3にも及ぶエリアが浸水して、鬼怒川の越水や堤防決壊などによって、浸水戸数は約一万棟、孤立救助者数は約4千人となり、常総市役所も孤立するという大災害になりました。
この鬼怒川での水害を受けて、政府は大規模氾濫に対する減災のための治水対策について再考することになり、平成27年12月には「水防災意識社会 再構築ビジョン」が策定されました。
今回はこの水防災意識社会について、そもそも水防災意識社会とは何か、水防災意識社会におけるソフト対策、水防災意識社会におけるソフト対策、などについて書いていこうと思います。

水防災意識社会とは何か

そもそも水防災意識社会とは何かをひとことで言うと、関東・東北豪雨を受けて、国土交通省が作成した治水対策に対する再構築ビジョンのことです。
国土交通省は全ての直轄河川とその沿川市町村において、平成32年度目途に、大規模な河川氾濫が発生しない、または発生しても被害を小さくするための水防災意識社会を再構築する取組みを行っています。

具体的に水防災意識社会は、ソフト対策とハード対策に分かれており、ソフト対策では住民が水害に関する危険を察知して主体的な避難ができるような対策を講じるというものであり、ハード対策は洪水氾濫を未然に防ぐことに加えて、仮に河川が氾濫した場合にも被害を軽減するための対策を講じています。
関東・東北豪雨で鬼怒川が氾濫した際にもそうでしたが、一般的に日本の河川は短くて流れが急であるために、記録的な豪雨が発生すると氾濫する可能性が高まります。
そのために、この水防災意識社会は重要であり、日本全体の治水対策を底上げする効果が期待されています。

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水防災意識社会におけるソフト対策

水防災意識社会におけるソフト対策としては住民目線で河川氾濫のリスクを主体的に察知することができるための仕組みづくりが取り組まれています。
水害に関するリスク情報を住民に周知・提供するという観点からは、洪水ハザードマップをより分かりやすく改良すること、立退き避難が必要な家屋倒壊等氾濫想定区域を公表すること、不動産関連事業者へ水害リスクを踏まえた上で土地利用をするような説明会の実施などが行われています。

また、河川氾濫に備えた防災計画や防災訓練という観点からは、水害から避難することに焦点を当てたタイムラインを作成し、いつ、誰が、何をするのかを事前に整理しておくこと、首長も参加するロールプレイイング式の防災訓練などが行われています。
河川氾濫の危険性が高まった際における避難情報の提供という観点からは、スマートフォンで避難情報をプッシュ通知できるシステムの整備や、洪水に対しリスクが高い区間において水位計やライブカメラの設置が進められています。

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水害からの防災対策を行う上での基本的な考え方

水防災意識社会におけるハード対策

水防災意識社会におけるハード対策は大きく、洪水氾濫を未然に防ぐ対策と決壊までの時間を少しでも引き延ばすために堤防構造を工夫する対策に分けることができます。
洪水氾濫を未然に防ぐ対策では、優先的に対策が必要な区間については、堤防整備・河道掘削等の流下能力向上対策などの対策が行われています。
決壊までの時間を少しでも引き延ばすために堤防構造を工夫する対策では、氾濫リスクが高いにも関わらず堤防整備に至らない区間において行われています。

以上、水防災意識社会について、そもそも水防災意識社会とは何か、水防災意識社会におけるソフト対策、水防災意識社会におけるソフト対策、などについて見てきました。
水防災意識社会は水害による被害を少しでも抑えるために重要なものであり、今後のさらなる取り組みが期待されています。

参照記事
首都圏における大規模水害の被害想定とその対策について

参考サイト▪︎国土交通省「水防災意識社会再構築ビジョン」