被災者が精神的に感じるストレスとその対応方法について

2018.07.09

災害を経験した被災者は精神的に大きな苦痛を伴うものです。大切な家族が被害を受けることもありますし、今まで生まれ育った街が壊れていく姿を見ることもあります。災害時に受ける精神的なストレスは年齢や性別の関係なく誰もが受けますが、被災者が感じるストレス反応とその接し方について理解を深めておくことは重要です。災害に対してどのようなストレスを感じるのかは人それぞれなので一概には言えませんが、一般的な話としてどのようなものがあるのか理解しておくことは重要です。
今回はそんな被災者が精神的に感じるストレスとその対応方法について、内閣府が公表している「被災者のこころのケア都道府県対応ガイドライン」と「被災者に対する支援制度心のケア」を参考にしながら書いていこうと思います。

被災者が精神的に感じるストレス

被災者が精神的に感じるストレスは大きく「心的トラウマ」と「社会環境ストレス」に分けることができます。
心的トラウマとは、災害から直接的に受けるようなものであり、地震の揺れなど災害の体感によるものや、建物の倒壊や火災などの災害の目撃によるものや、自らの負傷や財産の消失など災害による被害によるものが挙げられます。

一方で社会環境ストレスとは、これまでの日常生活がなくなることや、避難所での不慣れな生活や、被災者として注目されることなど、災害が発生した後の生活の変化に対するストレスが挙げられます。
時系列で見た場合には、発災直後は生命的な危機にさらされたことから一次的に精神不安になることがあります。この症状は時間の経過とともに軽減していきますが、一方で時間の経過とともにPTSDになる被災者の方もいます。
PTSDは急性ストレスの症状が1ヶ月にわたって持続する状態ですが、この症状は自然に回復することもありますが、慢性化して日常生活に影響が出ることもあります。
この他にも、災害をきっかけとしてうつ病やアルコール依存となったり、コミュニティの変化によって孤独感が高まったりすることもあります。

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精神的ストレスを抱えた被災者への接し方

精神的ストレスを抱えた被災者への接し方のまず基本的な考え方としては、生活再建に即した生活上のストレスを軽減させることがまず挙げられます。
生活再建をするための行政機関の紹介、災害・支援に関する情報提供、子守の手伝いなど、一般的な生活支援を行うことが重要です。
また、被災者の立場にたった支援が必要であり、災害に遭った時に起きる反応に関して正確な情報を提供することで、不安を軽減することができます。

時系列的に見た場合に、精神的ストレスを抱えた被災者への初期段階の接し方としては、災害後の様々な心身の不調は災害という異常な事態に対する正常な反応であることを伝えることがまず挙げられます。
また、一般の健康診断と連携した対応が望まれており、被災者は精神状態のみについては診断を拒否することがありますが、健康診断と同じタイミングに入り込むことで、円滑に精神状態についても確認することができます。
精神的ストレスを抱えた被災者への中長期的な段階の接し方としては、PTSDに注意するとともに、生活再建に向けた具体的な支援も欠かせません。
仮設住宅に移り住む時期になると、仮設住宅への見守り体制の構築やコミュニティ再建支援も重要になってきます。

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子供が災害によって精神的に受けるストレス

子供が災害によって精神的に受けるストレス反応としては、赤ちゃん返りをしたり、甘えが強くなったり、反抗的になったりすることがあります。
また、食欲がなくなったり、寝つきが悪くなったり、夜泣きをしたり、トイレの回数が増えたりすることが挙げられます。
これらのストレス反応への対処方法としては、行動の変化があってもむやみに叱ったりせずに、受け止めてあげることで、時間とともに回復していくことがあると言われています。
それでも症状が治まらない場合や心配な場合などには、医療機関や市町村のこころのケア担当・市町村の保健センターなどの専門家に相談する必要があります。

高齢者が災害によって精神的に受けるストレス

高齢者の場合には、加齢に伴う心身機能の低下が発生していたり、経済的な問題を抱えていたりする場合もあるので、災害による急激な環境の変化についていけない場合があります。
高齢者が災害によって精神的に受けるストレスについては、自然に回復することも多いですが、周りが気になる症状を発見した場合には、すぐに相談窓口や巡回しているこころのケアチームなどと相談することが重要です。
以上、被災者が精神的に感じるストレスとその対応方法について見てきました。災害は精神的に大きな負担を与えるものであり、その対応については事前に考えておくことが重要です。

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被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできること

被災者の精神的なストレスはどのように分類されるのか

被災者は誰しも災害によって精神的なストレスを受けますが、そのストレスの大きさはその人の特性や受けた災害の大きさなどによって変わってきます。
具体的に、災害時における被災者のこころのケアレベルは、その特性によって大きく「一般の被災者レベル」「見守り必要レベル」「疾患レベル」の3つに分類されます。

被災者のこころのケア:一般の被災者レベル

まず一般の被災者レベルですが、この被災者への対応方法としては、一般住民、ボランティア、学校など地域コミュニティレベルで対応していくことが重要です。
地域コミュニティを維持・再構築して、コミュニティの力を活用してできるだけ多くの被災者がお互いにつながっているという実感を得られるようにする必要があります。
そのためには被災者が自発的に集まりホッとできる居心地の良い場所が有効であり、喫茶スペースや足湯を設けたりして、被災者が自然にコミュニティに参加しやすい状況を作り出すことも重要です。

被災者のこころのケア:見守り必要レベル

次に見守り必要レベルですが、悲観が強く引きこもりなどの問題を抱えている被災者が対象になります。保健師、精神保険福祉士、臨場心理士などが対応を行います。
被災者に対する傾聴、アドバイスなどのこころのケアを行なっていく必要があります。

被災者のこころのケア:疾患レベル

最後に疾患レベルですが、発災により医療ケアが必要と判断された被災者や発災前から精神疾患を持つ患者への処方・投薬などの精神科医療ケアが必要になります。
必要に応じて入院治療なども必要になりますが、被災地で精神科病院の機能が喪失している場合は、遠隔地への入院手配なども行うことが求められます。
疾患レベルの被災者には、精神科医が含まれているこころのケアチームや、被災地の精神科医療機関によるケアが想定されます。

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被災者が精神的に感じるストレスとその対応方法について

都道府県が被災者の心のケアでできること

体制およびマニュアルの整備

まず発災前の段階から都道府県においては災害時のこころのケア体制を整備するとともに、マニュアルを作成することが望まれます。また、こころのケアチームを作成して、災害時に被災者のこころのケアに対応できるように、定期的な研修を行うほか、防災訓練などの機会をとらえて、必要な訓練を行うことが望まれます。

支援団体との連携

災害時に被災者のこころのケアを行う支援団体として、国立病院、日本赤十字社、臨床心理会、社会福祉施設などがあります。このうち国立病院系チームは精神科医を含んでいることが多く、疾患レベルまで対応が可能なことが多いです。また、日本赤十字社や臨床心理会から派遣されるチームは看護師や臨床心理士によって構成されており、見守りレベルの対応が可能になります。
都道府県担当部曲と支援団体は発災前に指揮系統について確認しておき、認識の共有を図っておくことが求められています。

こころのケアチームの配置

災害が発生すると保健師、精神保健福祉士、精神科医などが含まれる全国から派遣されたこころのケアチームに対応することが想定されます。
都道府県担当部局ではこころのケアチームの派遣受け入れ機関を発災前から設定しておき、派遣されたこころのケアチームの数や構成を把握します。
市町村のこころのケア担当は現地情報を集約してこころのケアニーズの把握を行うとともに、都道府県担当部局にこころのケアチームの派遣を要請します。

都道府県こころのケア対策会議の立ち上げ

大規模な災害には都道府県の担当部局または精神保険福祉センター内に地元医師会・精神科医療機関などからなるこころのケア対策会議を立ち上げます。
こころのケア対策会議メンバーは、都道府県の担当部局職員、精神保険福祉センター職員、地元医師会、精神科医療機関を中心に設置します。メンバーは発災前から選定しておき、防災訓練時には招集訓練なども行う必要があります。
こころのケア対策会議では、情報収集、方針の決定、被災者からの電話相談を受け付けるためのホットライン開設、広報・宣伝活動などが行われます。

こころのケアチームの派遣

派遣されたこころのケアチームの職種構成を確認し、それぞれが対応可能なケアレベルを明確化し、チームごとの役割分担を設定します。
それぞれのこころのケアチームに対応が必要な被災者を紹介できるように連絡方法についても周知を行うことが重要です。

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避難所や仮設住宅で被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできること

災害から復興してく段階における被災者の生活の場所は大きく避難所、仮設住宅、復興公営住宅の3つがあります。それぞれで被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできることは異なってきますが、共通することもあります。
被災者の孤立化を防止して新たなコミュニティを形成し、可能な限り発災前のコミュニティを再現することが重要になります。

避難所編:被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできること

リソースの限られている避難所において被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできることとしては、仮設喫茶・サロン、足湯などが考えられます。
お茶やコーヒーを飲んだり、足湯につかったりすることをきっかけとして、避難者同士がふれあい顔見知りとなることで自然な形でコミュニケーションを育むことができます。
避難者が自然に集まれる場所にゆっくりと座れる椅子を準備し、社交的なスタッフが避難者同士の話の輪を膨らませたりなどするとより効果的になります。
店舗は被災すると営業できない理髪師や美容師について、希望があれば避難所で出張・訪問営業できるように行政が配慮することで、できるだけ災害前からの生活環境を維持することも考えられます。

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仮設住宅編:被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできること

仮設住宅で被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできることとして、入居者同士が普段から顔を合わせたり挨拶を交わしたりできるような共用空間を設置することが重要になります。
仮設住宅が大規模となる場合には、地域社会づくりの拠点として集会所や、仮設商店街、喫茶、医療施設、福祉施設などの共用施設を設置します。

復興公営住宅編:被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできること

復興公営住宅で被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできることとして、従前のコミュニティを維持しやすい形で提供することがあげられます。
地縁血縁が濃密な集落が被災地となった場合には、必要に応じて従前居住地の近隣での公営住宅の共有や集団移転などに取り組むことが望まれています。
都心部での災害では、職場と住居の通勤時間の問題もあり、職場と居住があまりに離れていると家族と関われる時間もその分なくなることになり、災害から家族が復興する際の障害になることがあります。
そのために、復興公営住宅は可能な限り職場に近い場所に立地するようにすることが望ましいです。
以上、被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできることについて、被災者の精神的なストレスはどのように分類されるのか、都道府県が被災者の心のケアでできること、避難所や仮設住宅で被災者の精神的なストレスを軽減させるためにできることなどについて見てきました。
災害は被災者に大きな精神的なストレスを与えることがあり、その負担を少しでも軽減させることが被災者支援では求められています。

参照記事
被災者が生活再建するための4つの段階について

参考サイト▪︎内閣府「被災者に対する支援制度心のケア」▪︎内閣府「被災者のこころのケア都道府県対応ガイドライン」