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地区防災計画とは?ガイドラインをもとに解説してみた

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災害が発生することを止めることは難しいですが、災害が発生した際にできるだけ被害を抑えるための防災体制を整えておくことは可能です。

日本では災害に対する防災対策として、国の防災基本計画や都道府県・市町村の地域防災計画がありますが、それよりもより小さい範囲内における防災計画として「地区防災計画」があります。

地区防災計画は地域コミュニティで作成する防災計画であり、東日本大震災以降、その重要性が注目されてきました。

今回はそんな地区防災計画について、そもそも地区防災計画とは何か、地区防災計画の特徴は何か、地区防災計画の全体像、地区防災計画の作成方法、地区防災計画の提案手続き、地区防災計画の防災訓練、地区防災計画におけるガイドラインの活用、などについて書いていこうと思います。

地区防災計画とは何か

地区防災計画とは何かをひとことで説明すると、地域コミュニティレベルで行う防災計画のことです。

日本では災害に関するメインの法律として災害対策基本法がありますが、この災害対策基本法に基づいて、国レベルの防災計画として防災基本計画が策定されます。

この防災基本計画に基づいて都道府県や市町村では、それぞれのレベルでの防災計画として地域防災計画を策定します。このように日本の防災体制は防災基本計画をベースにそれぞれのレベルで防災計画が策定されています。

一方で東日本大震災の際には、このような国、都道府県、市町村のレベルでの災害対応だけではなく、地域コミュニティレベルでの災害対応も重要であることが確認され、市町村よりもっと細かい範囲である地域コミュニティレベルでの防災体制を整備するために地区防災計画制度が設立されました。


(防災計画:内閣府HPより引用)

地区防災計画では市町村の一定の居住者(小中学校の学区単位であることが多いです)や事業者が行う自発的な防災活動に関する計画として、それぞれの地域コミュニティが地区防災計画を策定することで、日本全体の防災力を向上させることができると期待されています。

地区防災計画の特徴

このように地区防災計画は地域コミュニティレベルで行う防災計画なのですが、いくつかの特徴を持っています。

地区防災計画の特徴①:ボトムアップ型の防災計画

地区防災計画は地区の居住者によって自発的に行われる防災活動に関する計画です。地区の居住者が作成する防災計画なので、地区の居住者の意見が強く反映されます。

地区の居住者が自らの防災計画の素案を作成して市町村防災会議に提案することができると言う計画提案制度も採用されています。このように地区防災計画は地域密着型のボトムアップ型防災計画であると言えます。

地区防災計画の特徴②:地区の実情にあった防災計画

地区防災計画は、都市部、郊外、住宅地、商業地、マンション、などあらゆる地区の居住者を対象にしており、その範囲も自治会、町内会、小学校区などのあらゆる単位を対象にしています。

実際に防災計画を策定するにあたって、沿岸部なのか山間部なのか、それとも内陸部なのかなどの自然特性や、都市なのかそれとも郊外なのかなどといった社会特性などによって、発生する可能性の高い災害も変わって来ます。

地区防災計画では対象範囲を自分たちで決めることができるので、それぞれの地区の実情にあった防災計画を策定することが出来ます。

地区防災計画の全体像

具体的な地区防災計画の作成手順を説明する前に、まず地区防災計画の全体像について説明しようと思います。

地区防災計画の全体像①:方針策定

はじめに行うことは地区防災計画の方針策定です。一般的に地区防災計画はその地区の防災力を高めて、災害時のダメージを少しでも減らすことにありますが、この目的を地域コミュニティメンバーで共有する必要があります。

基本方針をしっかりと明示することで、地区防災計画を作成するにあたっての体制構築を行います。

地区防災計画の全体像②:地区の分析・検討

地区防災計画は災害に備えた防災計画ですが、非常時の対応を考えるにあたって、まずは平常時に自分たちのコミュニティが大切にしていることを見直す必要があります。

それぞれの地区には、それぞれの強みや良さがあります。お年寄りにとって住みやすい街であったり、地場産業の発展に重視した街であったり、子供の教育に適した街であったり、自分の街の良さを再度認識します。

仮に災害が発生した場合には、その地域の良さにどれくらいの影響があるのかを整理する必要があります。その地区の良さとは災害時に守らなければならないことであるので、まずはその地区の良さを改めて洗い出し、可能であれば優先順位をつけていきます。

地区防災計画の全体像③:対策の検討

地域コミュニティを維持するために、都道府県や市町村からの災害対応として期待できることと、自分たちで行わなければならないことについて分けて考える必要があります。

そのために、まずは自分たちの都道府県と市町村の地区防災計画を見直すと良いでしょう。地区防災計画は地域防災計画と矛盾が生じてはいけないので、都道府県や市町村からの災害対応として期待できることを整理する必要があります。

地区防災計画の全体像④:地区防災計画の作成

ここまで来たらやっと地区防災計画の作成を行います。平常時には事前対策、防災教育、防災訓練、などを行うと同時に、行政、消防団、ボランティア団体などとの連携を深める計画を立てます。

災害時には、いつ、誰が、何を、どのようにすべきなのかをフェーズごとに分けて整理していきます。


(地区防災計画:内閣府HPより引用)

地区防災計画の全体像⑤:防災教育・防災訓練

地区防災計画は防災計画の作成が完了すると作成側としては一安心してしまいますが、実際の災害時に使える防災計画である必要があります。そのためには、作成した地区防災計画をもとに防災訓練を行い、PDCAサイクルを回す必要があります。

地区防災計画の作成

地区防災計画の作成方法は特に決まったものがあるわけではないので、自分たちの事情に合わせて地区防災計画を作成することが出来ます。地区防災計画を作成する際には内閣府が公表しているガイドライン(後述します)が参考になります。

地区防災計画の作成①:地区特性の把握

ひとことに災害といっても、色々な災害があります。地震、津波、洪水、火山活動などありますが、地区によっては発生する可能性のある災害は異なります。

例えば沿岸部であれば、地震、津波、高潮によって、建物崩壊、浸水などの危険性がありますし、山間部であれば土砂災害、豪雪の危険性がありますし、島部であれば台風による風水害や高潮の災害が予測されます。

自分の地域では過去にどのような災害が発生したのかを調査し、どの種類の災害がどれくらいの規模で発生したのかを把握します。過去の災害を調べることで、その地域で今後発生する可能性のある災害を予測するための材料にすることが出来ます。

地方公共団体ではそれぞれの災害の被害想定をしており、ハザードマップを作成しているケースが多いので、そこから自分たちの地区ではどの災害に対して弱いのかを見つけることもできます。

地区防災計画の作成②:要配慮者の把握

災害時には誰もが同じように避難することができる訳ではなく、どうしても行動が遅れたり、災害情報をうまく把握することができなかったりする人もいます。

高齢者、障害者、外国人、妊婦、子供などが彼に該当し、災害時用配慮者と言われます。災害が発生する前の段階から、自分の地域コミュニティにはこの災害時用配慮者がどれくらいいるのかを把握することが重要です。

災害時用配慮者については事前に名簿を作成しておくなどの対策を講じておき、災害は発生するまたは災害が発生しそうな際には、迅速に避難誘導や災害救助を行う必要があります。

地区防災計画の作成③:防災マップの作成

地区防災計画を作成するにあたっては、「防災まち歩き」と呼ばれる実際に地区を歩いて周り、地区の危険箇所を把握することが重要です。

防災まち歩きでは地区の危険になりそうな場所を把握します。大雨の際に土砂災害が起こりそうな場所、地震が起きたら建物が壊れそうな場所、火災が発生したら燃え広がりそうな場所を実際に歩いて見て回ります。

また、地区の避難経路、指定緊急避難場所、指定避難場所、消火栓の場所などについても、防災まち歩きの際には確認して行きます。

防災まち歩きでは地図に書き込みを行なって行き、地方自治体などから公表されているハザードマップと重ね合わせて「防災マップ」を作成して行きます。

この防災マップをもとに、地区の安全な場所と危険な場所はどこなのかを調べ、災害時に安全な場所に避難するための方法などについて検討します。

地区防災計画の作成④:活動体制の構築

地区防災計画を作成するにあたっては、活動体制を構築して行くことも必要です。地区防災計画を作成する実施主体がどこかによって活動体制の構築方法は異なって行きます。

事業者が中心になって地区防災計画を作成する場合には、転勤や異動を前提に活動体制を構築する必要があります。

構成メンバーをいくつかの班に分けて、平常時と災害時でそれぞれの班の役割を明確にしておくことが重要です。


(班構成の例:内閣府HPより引用)

地区防災計画の作成⑤:避難経路と避難場所

災害時にどのように避難するのかはとても重要です。避難場所としてはどこが指定されているのか、指定避難場所には食料や毛布などの備蓄品が保管されているのかなどを確認します。

避難路については、地区の地形、危険な施設の場所、避難時間などを考慮して慎重に定める必要があります。避難している最中に災害に巻き込まれることもよくあるので、そうならないように慎重に避難経路を定めます。

代替ルートも確保しておいたり、災害時用支援者をどのように避難させるのかを事前に考えておいたりすることも重要です。

地区防災計画の作成⑥:指定避難場所の運営

災害時に被災者が避難するための指定避難場所が生活を維持することができるように、指定避難場所の開設方法、運営方法、食料など備蓄品の保管方法などについて、事前に行政機関や施設管理者と調整して決めておくと良いです。

避難場所では老若男女問わず多種多様な住民が一気に共同生活をすることになります。そのために避難場所の運営はとても大変ですので、事前に避難所運営に関するガイドラインなどを参照しておく必要があります。

地区防災計画の作成⑦:初動対応

災害時に被害者をできるだけ減らすためには、初動対応を適切かつ迅速に行うことが必要不可欠です。初動対応の中でも特に初期消化活動と救出・救護は重要です。

まず初期消化活動ですが、地区内で火災が発生した場合には、自分たちの安全確保を最優先としながらも、消化器やポンプなどを活用して初期消化活動を行って、火災の延焼を防止する必要があります。

また救出・救護についてですが、災害時には建物が倒壊して場合によってはそのガレキの下に被災者が下敷きになることもあります。資機材を活用して救出にあたり、被災者を救出・救護させることが重要です。

地区防災計画の作成⑧:近隣の自主防災組織、消防団などとの連携

大規模な災害が発生すると地区防災計画を作成したエリアだけではなく、近隣の居住者や自主防災組織、消防団などとも連携して災害対応を行う必要があります。

そのためにも、平常時から人的な交流や情報交換を行っておき、いざという時には協力できるようにしておくことが重要です。

地区防災計画の作成⑨:帰宅困難者対策

商業施設など多くのお客さんを普段から滞在させている事業者については、帰宅困難者対策も考えておく必要があります。これらの施設では大量の帰宅困難者対策が発生する可能性があるので、それら帰宅困難者対策の安全をどのように確保するのかについても考慮する必要があります。

地区防災計画の提案手続き

地区防災計画の計画提案を行うためには、そのエリアにおいて防災活動を行う人が提案書を作成し、地区防災計画の素案とともに市町村防災会議に提案する必要があります。

計画提案が行われた場合には、市町村防災会議が地区防災計画を市町村地域防災計画に規定するかどうかを決めます。仮に必要がないと判断された場合にはその理由を提案書に通知します。

地区防災計画の防災訓練

地区防災計画はただ計画を作成するだけではなく、その計画がしっかりと使えるものでなければなりません。そのためには、防災訓練を行って地区防災計を実際に使えるものにする必要があります。

防災訓練をするためには市町村などと連携して、定期的に防災訓練を行うことが重要です。

また、地区に住んでいる人たちが防災意識を向上させて、いざ災害が発生した際に対応できる人材を育成する必要もあります。防災訓練には、クロスロードゲーム、避難所運営HUG、図上防災訓練DIG、などの防災教育を住民間で行うことが有効です。

地区防災計画はPDCAサイクルを回すことによってその質を向上させるためには、防災訓練を通して現状の計画で足りない部分を見つけ出して改善していく必要があります。

地区防災計画におけるガイドラインの活用

地区防災計画を策定するためには、内閣府から公表されているガイドラインを活用すると良いでしょう。なお、このサイトについてもこの内閣府のガイドラインを参考にして作成されています。

ガイドラインではそもそも地区防災計画が作られるようになった背景、地区防災計画の基本的な考え方、地区防災計画の内容、地区防災計画の提案手順などについて書かれています。

また、地区防災計画を作成するにあたっては、行政関係者や外部の専門家などのアドバイスを取り入れる必要もあります。地区防災計画の作成に防災の知識・経験がある人からのアドバイスは地区防災計画の質を向上させるために有効です。


(地区防災計画:内閣府HPより引用)

おわりに

以上、地区防災計画について、そもそも地区防災計画とは何か、地区防災計画の特徴は何か、地区防災計画の全体像、地区防災計画の作成方法、地区防災計画の提案手続き、地区防災計画の防災訓練、地区防災計画におけるガイドラインの活用、などについて見てきました。

地区防災計画は地域コミュニティレベルでの防災体制を構築する上で重要です。今後のさらなる普及と災害時の活用に期待されています。

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更新日 : 2018年5月10日
カテゴリー : 防災計画