災害復旧事業とは?インフラ施設を災害復興する流れ
洪水が発生して堤防が壊れたり、大雨が降って地すべりが発生したりと、災害が発生すると公共土木施設が破壊されてしまうことがあります。それらの施設は人々の生活の基盤になっているものも多く、迅速に復旧復興させる必要があります。
そんな社会基盤として活用されているインフラストラクチャーを復旧する事業を「災害復旧事業」と言います。災害復旧事業は被災地がいち早く復興して普通の生活を取り戻すためには必要不可欠です。
今回はそんな災害復旧事業について、そもそも災害復旧事業とは何か、公共土木施設災害復旧や農地・農業用施設災害復旧事業について、大規模災害における災害復旧事業はどうなるのか、などについて書いていこうと思います。
災害復旧事業とは何か
災害復旧事業とはひとことで言うと、災害復興の中でも社会基盤施設などの復旧事業のことを意味します。被災地において自然災害によって壊れた社会基盤施設をいち早く復旧することは重要です。
日本では古くから多くの地震や洪水などの自然災害が発生しております。過去を振り返ると、伊勢湾台風、阪神・淡路大震災、東日本大震災などの大規模災害がいくどもなく発生しており、そのたびに多くの被害を受けていました。
しかし、過去の大規模災害からは学ぶことも多く、社会的な基盤となる建造物を迅速に復旧するためにどうすれば良いのか試行錯誤が繰り返され、現在の災害復旧事業が生まれました。
公共土木施設災害復旧事業について
災害復旧事業でもまず重要になってくるのが公共土木施設です。具体的には河川、海岸、地すべり防止施設、道路、下水道など、人々の生活の基盤となるインフラ施設が壊れた際の復旧です。
公共土木施設の復旧については行われてきましたが、昭和26年に制定された「公共土木施設災害復旧事業国庫負担法」が現在の公共土木施設災害復旧事業について規定されている法律になります。
公共土木施設災害復旧事業では大部分を国庫の負担で災害復旧事業を行うことができることが特徴です。具体的には2/3の費用負担を国が行い、かつ残りの1/3についても起債充当が可能になっています。
また、対象となる公共土木施設の種類も多く、国の災害査定を待たずに先に工事を実施しても、写真などで被災状況を記録として残しておけば、災害復旧のための工事を着工した後に災害査定を行うこともできるので、迅速に災害復興活動を行うことができます。
ただし全ての災害において適用されるというわけではなく、公共土木施設災害復旧事業には採択要件があります。災害の大きさによる要件もありますが、そもそも公共土木施設の点検や維持補修業務を怠っていた場合などには採択されないことがあります。
災害の状況によっては、被災場所を元あった形に戻すことができずに、形状や構造を改良しなければならないこともあるかと思いますが、あくまで公共土木施設災害復旧事業は元の“効用”を復旧することを目的としているので、従来と異なる施設形状であっても適用が可能です。
このように公共土木施設災害復旧事業は被災地の実情に応じて柔軟に適用することのできる制度であると言えます。
農地・農業用施設災害復旧事業について
災害が発生した際に大規模な工事が必要になるものとして公共土木施設以外にも農地やそれに関連した農業用施設があります。公共土木施設に限らずこれら農地・農業用施設に関しても災害復旧事業の対象になります。
具体的に対象となるのは田、畑、ため池、水路、堤防など農業に関する施設であればだいたいが対象になります。制度を適用するための要件として、1か所の復旧工事費用が40万円以上であることなどがありますが、公共土木施設災害復旧事業と同様に着工前に工事を行うことも可能です。
大規模災害における災害復旧事業
災害の中でも被害が大きいものに対しては災害復旧事業も適用される制度が少し異なってきます。具体的には著しく激甚である災害が発生した際には「激甚災害制度」を適用することがありますが、この場合には費用面で公庫補助率が上がるので、自治体の負担は少なくなります。
激甚災害制度以外にも特定大規模災害が発生した際には「大規模災害復興法」が適用されるのですが、この法律が適用された場合には、被災した地方公共団体では災害復興事業を自ら実施することが難しくなることがあるので、災害復旧事業の代行を行うこともできます。
以上、災害復旧事業について、公共土木施設災害復旧や農地・農業用施設災害復旧事業に触れながら見てきました。災害が発生したら迅速に被災者の生活を元どおりに戻す必要がありますが、災害復旧事業はその中心に位置しているとも言えます。
参考サイト▪︎国土交通省「災害復旧事業について」