リスクファイナンスとは?リスクコントロール(既存の防災)との関係

災害が発生しても会社の事業を継続させると言われると、BCP(事業継続計画)を作成したり、防災マニュアルを作成したり、建物の耐震補強をしたり、代替拠点の整備を行ったりすることを検討する会社が多いですが、リスクマネジメントという観点から見た場合には、これらの防災対策以外にも「リスクファイナンス」を行う必要があります。
今回はそんなリスクファイナンスについて、そもそもリスクファイナンスとは何か、リスクファイナンスとリスクコントロールの関係は何か、などについて簡単に書いて行こうと思います。

リスクファイナンスとは何か

そもそもリスクファイナンスとは何かをひとことで言うと、企業の財務面におけるリスク対策のことです。災害が発生すると売上が激減したり、取引先が倒産したり、生産設備が故障してしばらく稼働することができなかったりするために、会社の手持ち資金が減少して、場合によっては倒産することもあり得ます。
そのために、災害が発生しても会社を財務の面から継続していけるようにするために、事前にリスクファイナンスの対策をしっかりとしておき、災害が企業の財務に及ぼす影響を管理しておく必要があるのです。
2011年に東日本大震災が発生した際には多くの人が犠牲になったと同時に、多くの企業も倒産しました。東京商工リサーチの調査によると東日本大震災関連の倒産は2018年の時点で1,875件に達しているそうです。企業を経営していくにあたって会社を存続させるためにやらなければならないことは多くありますが、東日本大震災で企業が倒産していく様子を見て、明日は我が身の心境で災害が発生しても会社が経営できるようにするにはどうすれば良いかと考えている企業も増加しています。
リスクファイナンスは大きく「リスク移転」と「リスク保有」の2つに分けることができます。

一つ目のリスク移転は、地震保険などに加入しておくことで、いざ災害が発生した際に発生する費用を第三者へとリスクを移転させておくことです。
二つ目のリスク保有は、災害によって発生する財務的な損失を受容することです。事前に預金を多めに保有しておくことで、災害によって突発的に資金が必要になった際にはその預金を取り崩して費用にあてることで災害対応を行います。
この他にもリスクファイナンスを考えるにあたって「CATボンド」と呼ばれる災害が発生した際には元本の支払いが削減される債券の利用や、災害時の融資枠を事前に銀行との間で取り決めておく方法など、いくつかの手段が考えられます。

参照記事
CATボンド(大災害債券)とは?災害に備えた債券

リスクファイナンスとリスクコントロールの関係

このようにリスクファイナンスとは災害時に発生する財務的なリスクを管理することですが、このリスクファイナンスとリスクコントロール(既存の防災)との関係について考えていこうと思います。
“既存の防災”という言葉が適切かどうかはわかりませんが、今までの防災ではリスクファイナンスについて対策を行うという考えがあまり普及していませんでした。
防災というと、防災マニュアルの作成やBCP(事業継続計画)の作成、建物の耐震補強などが注目されていました。これらの防災対策はまとめて「リスクコントロール」と呼ばれています。
BCPを作成する段階でリスクファイナンスについての項目も確かに存在するのですが、実際日本ですでに作成されているBCPの多くが、企業の総務部や各製造部門などでのヒアリングを元に作成されているものであり、なかなか財務の面が弱くリスクファイナンスについて詳しく考えられたBCPの作成は進んでいません。
しかしリスクマネジメント全体を考えた際には、リスクコントロール(既存の防災)とリスクファイナンスの両方が重要であり、内閣府においてもリスクファイナンスについて現状の課題と国の事業者における自然災害におけるリスク耐性を高めるために、学識者や実務者などを中心に「激甚化する大規模自然災害に係るリスクファイナンス検討会」が行われました。

(リスクファイナンスとリスクコントロールの関係:内閣府HPより引用)
今後企業の自然災害への耐性を考えていくにあたって、既存のリスクコントロールを強化すると同時に、リスクファイナンスを強化していくことは重要であると言えます。
以上、リスクファイナンスについて、そもそもリスクファイナンスとは何か、リスクファイナンスとリスクコントロールの関係は何か、などについて簡単に見てきました。
リスクファイナンスについてはまだ日本では普及が進んでいませんが、他の先進国ではその対策が進んでおり、日本企業においても競争力を高めるためにその対応が急務であると言えます。

参照記事
小規模企業共済災害時貸付とは?中小企業向け災害融資

参考サイト▪︎経済産業省「リスクファイナンスの発展に向けて」