学校の防災マニュアルを作成する際のポイント
大きな災害が発生した際に被害を少しでも小さくする際には事前に防災マニュアルを作成しておき、いざ災害が発生したらどう行動するのかを考えて置くことが重要です。特に学校の場合には、災害からの児童生徒を守るための避難行動、児童生徒の保護者への引き渡しや学校での待機、学校施設が避難所となる際の協力など、災害対応として高度なことが要求され、事前に災害時にどう行動するのか考えて置くことが重要になってきます。
今回はそんな学校の防災マニュアルを作成する際のポイントについて、発災前の災害対応、発災時の災害対応、発災後の災害対応、などについて、文部科学省が発行している「学校防災アニュアル作成の手引き」を参考にしながら書いていこうと思います。
学校防災マニュアル①:発災前の災害対応
発災前に災害準備としてしておくべきことは、体制整備と備蓄、点検、避難訓練、教員研修、に大きく分けることができますが、それぞれについて詳しく見て行こうと思います。
体制整備と備蓄
学校における防災を考えていくにあたって、まずは何より防災体制をどうするのかを考える必要があります。災害対応ではそれぞれの教職員が中核になるので、事前にそれぞれの教職員に役割を分担し、それらを統合する必要があります。
また、地域学校安全員会、学校保健委員会、学校支援地域本部などの組織をベースとして、地域の実態に応じて事前に協議を行い、連携体制を整備していくことも必要です。
備蓄については、学校内に避難して待機することを想定して、必要になる備蓄品をリストアップして、どこに保管するのかを考えることが重要です。学校施設が避難所になっている場合には、自治体や教育委員会とも協議をした上で、備蓄の管理について定めましょう。
点検
学校施設や学校設備の安全点検については計画的に実施するように学校保健安全法でも定められています。児童生徒の安全を確保するには、校舎内の施設だけではなく、避難経路や避難場所の安全点検も重要になります。
避難訓練
避難訓練は大きく、揺れた時にどうするのかという初期対応と、揺れが収まったらどうするのかという二次対応に分けることができます。避難訓練を通して、児童生徒が安全に避難することができるようにすると同時に、教職員についても災害時の動きを確認することができます。
教職員研修
災害時に児童生徒を守ることができるのかどうかは、一人一人の教職員の能力によるところが出てきます。教職員は災害から児童生徒を守るために、学校における防災体制や防災教育の重要性をしっかりと認識して、防災に対する自らの意識や対応能力などを高めるために、教職員向けの防災研修が重要になります。
学校防災マニュアル②:発災時の災害対応
発災時に災害準備としてしておくべきことは、初期対応、二次対応、安否確認、に大きく分けることができますが、それぞれについて詳しく見て行こうと思います。
初期対応
地震の場合には揺れを感じたち同時に安全確保のための初期対応を行うことが重要です。教職員の指示によって児童生徒が動くことも重要ですが、児童生徒が自ら指示がなくても初期対応できるように日常から指導や避難訓練を行うことが安全確保に繋がります。
二次対応
災害が収まった後に、次に発生する災害から避難をするためのマニュアルが必要になります。実際の避難行動では混乱が予想され、パニックや移動中の事故を防ぐために的確な指示が要求されます。
避難経路の状況は刻一刻と変わっていき、余震による道路の破損、火災の煙の向きなど、避難の途中では的確な判断が求められます。
安否確認
休日や下校後などの在宅時や登下校時に大きな地震が起きた際には、児童生徒の安否確認をする必要があります。災害時には電話が使えないことが多いので、メールやLINEなど、代替の通信手段を複数持って置く必要があります。
直接家庭や避難所に訪問して児童生徒の安否確認を行う場合には、教職員が二次災害に巻き込まれることがないように注意をすることも重要です。
学校防災マニュアル③:発災後の災害対応
発災時に災害準備としてしておくべきことは、対策本部の設置、引渡しと待機、避難所協力、心のケア、に大きく分けることができますが、それぞれについて詳しく見て行こうと思います。
対策本部の設置
二次対応を行って児童生徒の安全が確保されたら、今後の災害対応について対策本部を設置して、方針や具体的な業務を決めていく必要があります。
場合によっては災害について正確な情報が手に入らないこともあり得るので、臨機応変な対応が求められます。
引渡しと待機
災害の規模や被災状況によって児童生徒を下校させるか学校に待機させるのか判断をする必要があります。
保護者と連絡を取って相談しようと思っても、発災後には通信手段が使えなくなることもあり、保護者と連絡が取れなくなる可能性もあります。
そのために、事前に引渡しの判断については学校と保護者の間でルールを定めておくことが重要になります。
避難所協力
学校は避難所に指定されていることが多いですが、災害の規模が大きい場合には教職員が避難所の開設や運営に関して中心の役割を担います。
ただし、教職員は児童生徒の安全確保、教育活動の早期開始が最も優先して行うべき役割であることに変わりはなく、事前に防災担当部局や地域住民関係者と体制整備をしておき、できる限り地域住民が主体的に避難所の開設・運営をすることができる体制を作っておくことが重要です。
心のケア
災害に遭遇するということは誰にとっても衝撃的なことであり、家族を失ったり、事故を目撃したりすることで、強い衝撃からストレス症状が現れることがあります。
児童生徒によってはその症状が長引くこともあるので、日頃から児童生徒の健康観察を徹底して、適切な心のケアの支援を行うことが必要になります。
以上、学校の防災マニュアルを作成する際のポイントについて、発災前の災害対応、発災時の災害対応、発災後の災害対応、などについて見てきました。
学校が災害時に果たす役割はたくさんありますが、教職員は教育のプロではあっても災害対応のプロである訳ではありません。そのために事前に防災体制をしっかりと整備しておくことがより重要になってきます。
参考サイト▪︎文部科学省「学校防災アニュアル作成の手引き」