防災タイムラインとは?水害や台風から計画的に防災する

日本は災害がよく発生することで知られていますが、世界全体を見ると日本に限らず各地で様々な災害が発生しています。例えばアメリカではハリケーンによる災害が多く発生しており、2005年に発生したハリケーン・カトリーナは甚大な被害をもたらして日本でも大きく報道されました。
そんなハリケーンに悩まされているアメリカでは防災計画として「タイムライン」というものを作成しています。日本でもすこし前からこのタイムラインという考え方が広まっており、多くの自治体で採用されていますが、まだまだ普及が進んでおりません。
今回はそんな防災タイムラインについて、そもそも防災タイムラインとは何なのか、防災タイムラインを作成するメリットは何なのか、などについて書いていこうと思います。

防災タイムラインとは何か

そもそも防災タイムラインとは、災害が発生する前の段階から事前に「誰が」「いつ」「何をするのか」を一覧表にして時系列で示したものです。国土交通省がタイムラインとは何なのかという動画をアップしていたのでご紹介します。

このタイムラインは冒頭でもご説明した通り、アメリカでハリケーンへの防災計画を作成する中で生まれました。アメリカと日本では防災に対する体制も違うのでそのまま同じものを活用するわけにはいかないのですが、参考にできる部分は多くあります。

(大規模水災害に関するタイムライン:国土交通省より引用)
災害対応を行ういくつかの機関を一覧表に並べることで、どの機関がどの災害対応をいつ行うのかをタイムラインでは表示します。時系列を視覚的に分かりやすく示している点が特長的であると言えます。
災害が発生する5日前の段階からタイムラインは始まるので、事前に災害が発生することが予測可能な台風や洪水の対策において特にその効果を発揮します。しかし、地震など事前予測ができない災害についてもタイムラインを作成することで、他の関係機関がどんな活動をしているのかを見える化することができます。

(タイムラインの策定と発令の関係:国土交通省より引用)
国土交通省が公表しているデータによると、タイムラインを策定している市町村は、タイムラインを策定していない市町村と比べて避難勧告等の発令率が2倍以上高くなっています。
実際にタイムラインについてもっと詳しく知りたいとい場合には、国土交通省のHPに添付されている「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針」がとても参考になるので、是非一度見てみてください。

なぜ防災タイムラインが重要なのか

専門家の方によって意見は分かれますが、近年は地球温暖化などの気象変動の影響もあり降雨現象が極端化しているという意見もあります。そのために台風や大雨によって大きな災害が発生する可能性があります。
基本的に地方自治体の防災を担当する人は3年おきに人事異動で移動するケースが多く、地方自治体の防災担当者出会っても災害対応にかなり精通しているわけではないことの方が多いです。その中で”何十年ぶりの大雨”が降ると、地方自治体もどう対応すれば良いのか分からずに、被害が拡大してしまう可能性もあります。
どんな災害が起きるのか事前に想定することができず、災害が発生してからの対応になるのでどうしてもその場しのぎの対応になってしまう。災害現場は混乱を極めるために命を左右するような重要な事項に対応することができなかった、などということが発生する可能性もあります。
以上の理由から、タイムラインを作成して、事前に「誰がいつ何をするのか」を把握しておくことで、いざ災害が発生した際に、無駄なく漏れなく迅速に行動することに役立つのです。

参照記事
水害保険(水災保険)とは?風水害からのリスクに備える

防災タイムラインを作成するメリット

防災タイムラインを作成することは特に義務化されているわけではなくて、実際に防災タイムラインを策定している市町村はそこまで多くありません。しかし、防災タイムラインを策定することで多くのメリットを享受することができます。

防災タイムラインで先を見越した災害対応ができる

災害が発生してその対応を行うと、どうしても場当たり的に目の前の課題を解決するのに精一杯になり、なかなか先を見越した行動をとることが難しいです。しかし、防災タイムラインを策定しておくことで、今から何時間後にどのような問題が発生すると想定され、それに対する対策として何をすれば良いのか先を見越した災害対応を行うことができます。

防災タイムラインで誰が何をするのかが責任の所在が明確になる

防災タイムラインを策定すると、他の機関も含めて、「誰が」「どのタイミングで」「何をしなければならないのか」をはっきりとさせることができます。事前に誰が何をすべきかを合意の上で計画に落とし込むことができるので、災害が発生してから調整をして時間を無駄にしなくて済みます。

防災タイムラインで連携機関との関係を深めることができる

防災タイムラインは自分の機関だけで完結するわけではありません。防災タイムラインを作成する過程で、いざ災害が発生した際に連携する関係機関とも一緒になって防災タイムラインを作成する必要があります。
防災タムラインを一緒になって顔を合わせて策定する過程で、連携機関の実際の担当者と顔見知りになることができるので、災害が発生した際にスムーズに意思疎通できるという副次的なメリットもあります。
以上、防災タイムラインとは何か、防災タイムラインを策定するメリットは何なのかについて見てきました。タイムラインはまだまだ普及が完全に進んではいませんが、その有効性については確認が取れているので、まだ防災タイムラインを作っていない場合には策定を検討すると良いかもしれません。

参照記事
風水害とは?大雨や台風によりもたらされる災害について

参考サイト▪︎国土交通省「タイムライン(防災行動計画)策定・活用指針」