大規模災害時にインターネットを活用して災害対応する方法

現在の社会では高齢者を除けば誰もがスマートフォンを持ち歩き、何かわからないことがあればGoogleで検索をして調べるのが当たり前になりつつあります。また、家族に安全を知らせる手段も電話だけではなくてLINEなどのインターネットを利用した連絡方法にも変わりつつあります。このように大規模な災害が発生した際に、インターネットを使って効果的な対応をすることが重要になります。
今回はそんな大規模災害時にインターネットを活用して災害対応する方法、総務省が公表している「大規模災害時におけるインターネット活用事例集」をもとに書いていこうと思います。

最新の道路状況の収集・提供

大規模な災害によって道路などの交通システムが被害を受けると、被災者へ支援物資を届けたり、ボランティアが活動したりすることに大きな障害となります。
その中で被災者に支援物資を届けるためには、最新の道路状況の収集・提供が重要になってきます。このために、自動車に搭載されたGPSから無線通信網を介して通行情報が自動的に収集され、Web上の地図と連動して通れる道路が分かるようなシステムの開発が行われています。

具体的に「自動車通行実績情報」では、民間企業4社の持つ通行実績情報から通れる道路をWeb上に公開し、被災地への物流ルートを検討する際に使われました。
この他にも「Googleマップ」「Mapion」「国土地理院」などでは被災地の衛星写真や航空写真を提供し、被災地の被害の把握を行うために活用されました。

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支援物資のマッチング

避難所に適切な支援物資を届けることは困難です。時間の経過とともに避難所ごとに必要になってくるものも変化してくるので、どこに何をどれくらい届ければ良いのかを把握することが重要になります。
この問題を解決するために、被災者やボランティアなどが必要とするものをWeb上に細かく把握することができるサービスが出てきています。
具体的には「Amazon」によって7,000以上の欲しい物リストが公開されて、112,000点以上の支援物資が東日本大震災の際には届けられました。

支援物資だけではなくて、ボランティアのマッチングについても「助けあいジャパン」「ボランティアプラットフォーム」などのサービスが展開されました。
これらのマッチングサービスについては、高齢者などのインターネットを使用しない人でも活用することができるように、ボランティアなどが直接ヒアリングを行う必要もあります。

生活関連情報の提供

被災地では生活に必要な物資をどこで手に入れることができるのかを把握する必要があります。炊き出しがどこで行われていて、どのスーパーが営業しているのかなどの情報を被災者が簡単に知ることができるシステムが有効です。
そのために物資やサービスの提供場所や時間帯の口コミ情報を地図上に表示するシステムなどが提供されています。

具体的には、Yahooが提供している「被災地エリアガイド」では、避難所情報、給水情報、ガソリン在庫情報、店舗の営業時間情報、医療機関の診療受付情報など多数の口コミが投稿されました。
以上、東日本大震災の際に行われた被災地に支援物資を届けるためのインターネット有効活用事例について見てきました。被災地に支援物資を効果的に届けるためのインターネット活用には大きな期待が寄せられています。

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メールや動画通信による医療・健康相談支援

大規模な災害が発生した際には、被災地において負傷者が多く発生するので医療に関するニーズが増加しますが、一方で被災地の病院では受け入れることができる患者さんの数に限界がありますし、病院そのものも被災しているので十分なリソースが確保できないことがあります。
そのために被災地だけでは現場の医療ニーズに対応することが難しいのですが、東日本大震災の際には、患者が直接医療機関に行かなくてもメールや動画通信を通して医療従事者に相談をすることができる対策が行われました。

(日本赤十字社医療救護所:災害写真データベースより画像引用)
具体例として「Rescue311」ではメールやTwitterからの医療相談に対して、ボランティアの医師などによって応急処置のアドバイスが行われました。その医療従事者の数は日本全国で約100名が参加して、1年間に約150件の相談が寄せられたと言われています。
この他にも、九州大学は被災地の避難所に対して現地での医療支援が終わった後にも動画通信を活用した健康相談を行い、九州大学の精神科医が避難所の被災者や行政職員からの相談に対応しました。
最初から遠隔通信で医療支援を行おうとするのではなくて、できるだけ正確に診断を行うためにも医療従事者が被災現場を訪問すべきであることには変わりはありませんが、継続的に医療支援を行うためにメールや動画通信による医療・健康相談支援を活用することができます。

医療情報の共有・連携

災害に限った話ではありませんが効果的な診察を行うためには過去の病歴や投薬歴と行った診断記録が必要ですが、災害対応で混乱している時期に避難所や仮設住宅での診断記録を適切に管理することは難しいです。
医療情報はとても重要な個人情報であるために厳密に管理をする必要がありますが、医療従事者は入れ替わりが激しいために医療情報を容易に引き継げるようにする必要があります。

具体的には、被災者の医療情報がクラウド上で一元管理される試みがされています。これによって医療従事者が避難所や仮設住宅などで巡回診察を行う際に活用することができます。
NTTデータの「巡回診療支援システム」では、福島県内の避難所住民の紙の診療記録の電子化を行っており、これによって医者が各避難所を巡回する際に被災者の診断記録をタブレットなどから参照することができるようになりました。
以上、東日本大震災の際に行われたインターネットを有効活用した医療支援の事例について見てきました。「災害」「IT」「医療」という3つの分野を繋げることによって被災地医療をより効果的にできる可能性があります。

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自治体公式HPのサイトへの災害時のアクセス負荷軽減

災害が発生した際に住民が災害に関する情報や今後どうすれば良いのかを確認する際には、自治体の公式HPを閲覧することが一般的です。
そのために自治体のHPは発災前後には大量のアクセスが集中しますが、その住民からの大量のアクセスによってサーバが機能停止になることがあります。

この自治体公式HPのサイトへの災害時のアクセス負荷軽減のための方法として、東日本大震災の際に岩手県では公式サイトをテキスト情報のみの配信に切り替えました。これによってサイトの表示する情報量を減らして負荷を軽減させました。
この他にも公式サイトのミラーサイトやキャッシュサイトを活用するという方法もあります。これは公式サイトと全く同じサイトを別のサーバに構築するというものであり、公式サイトにかかる負荷を軽減させて、サーバがダウンしてHPが見られないとい状況を防ぎました。
ただし、サーバ関連は災害が発生してから考えていたのでは間に合わないこともあるので、平時から民間業者との間で話し合いを行なっておき、予め準備をしておくことが重要です。

インターネット通信環境の確保

災害時には誰もがどうすれば良いのか行動に迷うことがあり、インターネットを通じて検索をして、適切な避難行動の方法や災害に関する情報を検索したり、コミュニケーション手段としてインターネットを活用したりすることがあります。
そのために災害時であったとしてもインターネットの環境は電気・ガス・水道のライフラインと同様に寸断させてはいけないものであり、仮に寸断したとしても迅速に復旧させなければなりません。
東日本大震災の際には、通信施設が被災したときには避難所の近隣などに衛星通信機能のある移動基地局が設置されました。

ソフトバンクなどの通信キャリア会社は公衆無線LANサービスで、通常ならば有料のサービスを無料で解放なども行われました。
インターネット通信に利用できる移動基地局の数には限りがあるので、事前に通信事業者と連携を取っておくことも重要になります。
以上、大規模災害時でもインターネットを見られるようにする対策について見てきました。今やインターネットは生活に欠かせないものであり、災害時にも使える環境作りを事前に行っておく必要があります。

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参考サイト▪︎総務省「大規模災害時におけるインターネット活用事例集」