下水道総合地震対策事業と下水道浸水被害軽減総合事業について
大きな災害が発生すると建物やインフラ施設などに大きな被害をもたらすことがあります。その中でも道路や電気・水道・ガスなどのインフラ関連施設は住民の生活を支える基盤であり、災害が発生しても被害を受けにくい体制を作り、仮に被害を受けても早急に復旧することが必要になります。
インフラ関連施設とひとことに言ってもその種類は多岐に渡りますが、その中でも下水道施設の防災は、被災地における衛生などの面から重要なインフラ施設の一つになります。
国土交通省ではこの下水道について防災体制を整えるために、「下水道浸水被害軽減総合事業」と「下水道総合地震対策事業」の取り組みがなされています。
今回はそんな下水道浸水被害軽減総合事業と下水道総合地震対策事業について、下水道浸水被害軽減総合事業とは何か、下水道総合地震対策事業とは何か、国土交通省では他に下水道の災害対応力のためにどのような取り組みをしているのか、などについて書いて行こうと思います。
下水道浸水被害軽減総合事業とは何か
そもそも下水道浸水被害軽減総合事業とは何かをひとことで言うと、一定規模の浸水実績がある浸水対策に取り組む必要性が高い地区で「下水道浸水被害軽減総合計画」を策定して、下水道の浸水対策を重点的に推進する事業のことです。
具体的には地方公共団体、関係住民等が一体となって、貯留浸透施設等の流出抑制対策に加え、内水ハザードマップの公表等の総合的な浸水対策を推進していきます。
一定の条件を満たす下水道施設については、補助の対象にすることができます。
下水道総合地震対策事業とは何か
そもそも下水道総合地震対策事業とは何かをひとことで言うと、人口集中地域(DID地域)を持っている都市など地震対策に取り組む必要性が高い地域において、「下水道総合地震対策計画」を策定して、下水道の地震対策を重点的に推進するというものです。
下水道総合地震対策事業は兵庫県南部地震が発生した際に下水道施設に大きな被害をもたらした教訓を踏まえて、同様の災害が発生した際には同じような被害が発生しないように耐震化を進めるために取り組みが始まりました。
日本は地震が多発することから、下水道については耐震基準があるのですが、現在の下水道に関する耐震基準は兵庫県南部地震の被害を踏まえて平成9年に施行されたのですが、それ以前に施行された下水道施設は耐震化が十分に進んでいないという問題があります。
そのために都市など下水道の地震対策をする必要がより高い地域については「下水道総合地震対策計画」を策定して、下水道の地震対策を行うことが推進されています。
下水道総合地震対策事業についても下水道浸水被害軽減総合事業と同様に条件を満たす事業については補助の対象になります。
具体的には、地域防災計画に位置付けられた施設などを接続する管きょの耐震化事業、地域防災計画に位置付けられた緊急輸送路及び避難路並びに軌道の下に埋設されている管きょの耐震化事業、地域防災計画に位置付けられた施設などが存在する排水区域における下水排除面積が一定 規模以上の貯留・排水施設の耐震化事業、などが下水道総合地震対策事業の補助対象となっています。
下水道の災害対応力のための他の取り組み
下水道の災害対応力を向上するためには、今回の下水道総合地震対策事業や下水道浸水被害軽減総合事業の他にも様々な取り組みがなされています。
具体的には、まず「Gアラート」の運用開始が挙げられます。Gアラートとは、気象庁から発信される地震情報をもとに、震度5弱以上の地震発生地域における下水処理場・ポンプ場を自動で抽出し、施設を管理する都道府県・市町村の担当職員や関係機関職員の携帯やパソコンに通知するシステムのことです。
JアラートやLアラートなど、災害関連のアラートは色々とありますが、Gアラートは下水道に関するアラートになります。
下水道施設を管理する地方公共団体における地震発生時の初動迅速化、国や関係機関による早急な支援体制の構築などに活用するために、このGアラートは運用が開始されました。
この他にも、下水道BCP策定マニュアル(地震・津波編)も下水道に関する災害対応力の向上をするためのものとして挙げられます。
下水道のBCPを策定することで、災害時における下水道機能の確保につなげることができます。
以上、下水道浸水被害軽減総合事業と下水道総合地震対策事業について、下水道浸水被害軽減総合事業とは何か、下水道総合地震対策事業とは何か、国土交通省では他に下水道の災害対応力のためにどのような取り組みをしているのか、などについて見てきました。
下水道は人々の生活を支える重要なインフラ施設であり、事前に防災に関する対策を行っておくことで、災害発生時の被害を抑えることができます。
参考サイト▪︎国土交通省「安心・安全の確保に向けた総合事業実施状況」