ソフト防災対策はハード防災対策の代替になるのか?

防災対策は大きく「ハード防災対策」と「ソフト防災対策」に分けられます。ハード防災対策とは建物を震災補強したり、ダムを建設したりするなど物理的な防災対策です。一方でソフト防災対策とは防災訓練をしたり、防災情報を発信したりするなど非物理的な防災対策です。
古くは防災と言ったらハード防災が中心であり、防災=建物の補強というイメージが強くありました。しかし、次第にハード防災の限界が指摘されるようになりソフト防災が強調されるようになってきました。今回はそんなソフト防災とハード防災の関係について見ていこうと思います。

ハード防災対策とは何か

そもそもハード防災対策とはひとことで言うと、構造物を立てたり補強したりすることで災害対策をすることです。建物の耐震補強が一番イメージしやすいのではないかと思いますが、他にもダムを立てたり、堤防を高くしたりすることもハード防災です。
日本は ハード防災対策を重視してきた歴史的な経緯があるのですが、どうしてもハード防災ですとお金がかかってしまいます。例えば建物を耐震補強しようとすると何百万円などしますし、ダムの建設となると数百億や数千億かかることもあります。
このようにハード防災対策は割高なのですが、一方で即効性が高く、工事が完成してしまえばすぐに防災としての機能を発揮します。

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ソフト防災対策とは何か

ソフト防災対策とはひとことで言うと、防災教育や防災情報の発信などといった構造物的なものではない防災対策です。誰もが小学生の頃に防災訓練を経験したことがあるかと思いますが、あれもソフト防災対策のひとつです。
ソフト防災対策は最近になって注目度が増してきています。その理由として何よりもあげられるのが、費用がそこまでかからないからです。防災訓練は外部のコンサルタントを入れれば防災計画の作成なども含めて数百万円かかることがありますが、自分たちで防災訓練をすればコストはかかりません。
防災情報を発信するシステムについても、既存のよくあるシステムを採用するのであれば数百万円で作ることができ、保守運用も数十万円程度で行うことができます。
このようにソフト防災対策は費用が比較的にかからないことから“これからの防災のあり方”として注目を受けています。

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ソフト防災対策とハード防災対策はお互いに補完し合う

ソフト防災対策は確かにハード防災対策に比べればコストがかかりにくいのですが、一方で防災への即効性が低いという問題があります。即効性という言葉が適切かはわかりませんが、ソフト防災対策は実行するだけでは対策として不十分であり、それを行う人がしっかりと理解して使いこなして初めて意味をなします。
いくら防災訓練をしても、そもそもしかるべき対象者が防災訓練に参加していなければ意味がありませんし、防災を担当する人が配置転換になった場合などに、引き継ぎがうまくされなければ、過去に行ったソフト防災対策を十分に活かすことが出来なくなる可能性もあります。

このようにソフト防災対策にはコストが割安であるというメリットもありますが、本当に使いこなすのが難しいというデメリットも存在します。そのために、ソフト防災対策だけをしっかりとすれば災害時に人の命が救えると短絡的に考えるのは危険です。
ハード防災対策にはソフト防災対策にはないメリットがあり、ソフト防災対策にはハード防災対策にはないメリットがあります。そのために、お互いの良いところと問題点をしっかりと把握した上で、ソフト面とハード面のそれぞれの良さを引き出す形で防災対策を行う必要があるのです。

参考サイト▪︎豪雨災害と防災情報を研究するdisaster-i.net