津波てんでんことは?その4つの意味からみる災害教訓

2018.05.01

日本では今までに何度も災害が発生しており、その度に多くの人が犠牲になってきました。しかし、一方でそのたびに成功事例や反省点のノウハウのようなおのが積み重なっていき、災害教訓という形で世代を超えて伝承されています。
そんな災害伝承の中に「津波てんでんこ」という津波からの避難に関する標語があります。東日本大震災の際にはこの標語が津波からの避難に役立ったという事例もありました。
今回はそんな津波てんでんこについて、そもそも津波てんでんことは何か、津波てんでんこを活かした災害事例、などについて書いていこうと思います。

津波てんでんことは何か

そもそも津波てんでんことは何かをひとことで言うと、今までに津波被害を何度も受けてきた東北の三陸地方に伝わる災害教訓であり、津波から逃げる時には各自がてんでバラバラに逃げろという意味です。
三陸地方では昔から親から子へと伝えられていましたが、1990年に開催された第1回「全国沿岸市町村津波サミット」において山下文男さんたちのパネルディスカッションから標語になりました。
「てんでんこ」はそれぞれ、各自という方言であり、そのまま直訳すると「津波てんでんこ」=「津波は各自で」というような意味になります。もう少し防災教訓のような形で表現すると、津波から逃げる際には、自分の命は自分で守らなければならず、各自がてんでばらばらに高台へと逃げろ、というような意味になります。

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これだけ聞くと、津波てんでんこは他の人と助け合うことなく自分だけ助かれば良いという風にも受け取ることができ、利己主義的に見えるかもしれません。
しかし、津波てんでんこは4つの意味を多面的に盛り込んだ用語であると言われています。1つ目は、自助の重要性です。よく災害対応では自助、共助、公助の3つが大切といいますが、その中でも基本はやはり自助であり、他の人がいざとなったら助けてくれるだろうとは考えずに、自分の命は自分で守るという大原則を強調しています。
2つ目は、他人の避難行動促進です。津波てんでんこの原則に則って、避難場所へと走って逃げることで、それを目撃した他の人も危機感を持ち、避難場所まで急いで逃げなければならないという意識を持たせ、避難行動を促進することができます。
3つ目は、信頼関係の構築です。事前に津波が発生したらとりあえず自分の命を守るために避難場所に一目散に逃げようと言い合うことで、災害が発生した際に、もし自分のことを探している人がいたらどうしようと思って避難行動が遅れることを防ぐことができます。

4つ目は、自責感の低減です。災害による犠牲者が発生すると生存者はなぜ自分だけ生き残ってしまったのかという自責の念にかられることがあります。しかし、津波てんでんこを事前に言い合っておけば、約束しておいたことだから仕方がないとい罪悪感を減らすことができるかも知れません。
津波てんでんこは短い文章であり、意味をいろんな角度から取ることができるので、利己主義的で現代社会にはふさわしくないという意見もありますが、その裏には深い意味が隠されているのです。

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津波てんでんこを活かした災害事例

津波てんでんこを活かした事例はいくつかありますが、その中でも最も有名なものに東日本大震災における「釜石の奇跡」の事例があります。釜石の奇跡とは津波てんでんこの考え方を防災訓練で受けていた釜石市内の小中学校の生徒が津波発生時にこの教訓を実施し、被害を最小限に抑えることができたという事例です。
実際に東日本大震災が発生した際には、小中学校の生徒は校舎から校庭に逃げてきた後に、点呼などをせずにとりあえず一目散にそれぞれが避難場所へと逃げました。これによって迅速な避難行動ができ、多くの命を救うことができたと言われています。
以上、津波てんでんこについて、そもそも津波てんでんことは何か、津波てんでんこを活かした災害事例、などについて見てきました。災害教訓には昔の人の知恵がふんだんに入っており、現在の防災でも活用できるケースが良くあります。

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参考サイト▪︎内閣府「日本大震災から学ぶ 〜いかに生き延びたか〜」