地方自治体の行政がBCP(業務継続計画)を作成する重要性

少し前から「BCP」や「事業継続計画」という言葉がよく聞かれるようになってきました。なんとなくアルファベット3文字で 何となく最先端っぽい印象がありますが、中には防災とBCPを混同している人が多くいます。しかし防災とBCPは別物です。
また、BCP(事業継続計画)と聞くと民間企業が行う災害対策のように考えている人もいますが、都道府県や市町村などの地方公共団体においてもBCPを作成することは重要です。なお行政の場合には「事業継続計画」ではなくて「業務継続計画」と呼びます。
今回はそんな行政のBCP(業務継続計画)について、そもそも行政のBCP(業務継続計画)とは何なのか、なぜ行政のBCP(業務継続計画)が重要なのか、ガイドラインでは最低限必要な行政のBCP(業務継続計画)として何を定めているのか、などについて書いていこうと思います。

地方自治体など行政のBCP(業務継続計画)とは何か

地方自治体など行政のBCP(業務継続計画)とはひとことで言うと、大規模災害が発生した際に都道府県や市町村などの行政そのものも被災した場合に、どこに代替校舎を設置して、限られたリソースの中でどの業務を優先すべきか決めることです。
災害が発生した際にそもそも普段活動している校舎そのものが大ダメージを受けることが実際にあります。地域防災計画に基づいて災害対策本部を設置しようにもそもそも建物がないという状況が発生します。
そんな非常事態にいかに災害時特有の業務や通常業務で止めることができない部分を維持していくかを災害が発生する前に考えておくのがBCP(業務継続計画)なのです。災害が発生した時にとりあえず目の前の課題だけを場当たり的に対応していくのでは、本当にやらなければならない対処を見逃して取り返しのつかないことにつながる可能性があります。
災害発生直後に優先的に実施しなければならない対応を事前に決めておくことで、いざ災害が発生した際には迅速かつ正確に災害対応することができるのです。

参照記事
災害時に担当者を交代制にする重要性とその方法について

なぜ地方自治体にBCP(業務継続計画)が必要なのか

地方自治体はもともと地域防災計画にて防災計画を作成しています。この地域防災計画には災害が発生した際にいかに住民を救助するかが書かれていますが、時として行政そのものが大被害を受けてしまうことがあります。BCP(業務継続計画)ではそんな行政そのものを災害時にどうやって維持するかを取り決めています。
災害発生時は当然ながら行政は大混乱します。今まで経験のしたことのない業務が大量に発生して、人の生死に関わる決断を分単位で行う必要があることすらあります。その判断を限られたリソースの中で行うことは地域防災計画だけでは不十分です。
そのために事前にBCP(業務継続計画)を作成しておき、代替拠点でしっかりとした体制を築いた状態で、限られた資源を優先業務に当てていく必要があるのです。

参照記事
受援計画と業務継続計画(BCP)との密接な関係

地方自治体のBCP(業務継続計画)策定に関するガイドライン

地方自治体のBCP(業務継続計画)策定については、内閣府によってガイドラインが作られており、内閣府のHPから閲覧することができます。
地方自治体のBCP(業務継続計画)が大切であることを述べてきていますが、実際に限られた予算の中で地方自治体が動いていくためには正直そこまで作り込むことができないというケースも当然あると思います。
それでも必要最低限のBCP(業務継続計画)を作成するためにこのガイドラインはとても参考になります。具体的な書類様式についても準備されています。この中で内閣府は必要最低限必要な防災対策として下記の6つを挙げています。

地方自治体のBCP

(1) 首長不在時の明確な代行順位及び職員の参集体制
(2) 本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定
(3) 電気、水、食料等の確保
(4) 災害時にもつながりやすい多様な通信手段の確保
(5) 重要な行政データのバックアップ
(6) 非常時優先業務の整理

地方自治体がBCP(業務継続計画)を作成することは義務ではありませんが、政府がこのようにガイドラインを公表しているにも関わらず、BCP(業務継続計画)を作成せず、それによって住民が犠牲になった場合には、世間から非難される可能性もあるでしょう。
このガイドラインの中でも「(2) 本庁舎が使用できなくなった場合の代替庁舎の特定」については、行政の災害拠点がなければその後の防災対応に大きな影響を与えるので、優先的に取り組むべきではないかと個人的には感じております。
また、BCP(業務継続計画)は作成したら終わりではありません。よく言われる言葉ですがPDCAを回して改善を加えていく必要があります。 地震が発生した場合の対応や洪水が発生した場合の対応などをいろんな災害を想定して、防災訓練からBCP(業務継続計画)を改善していく必要がるのです。

受援計画を作成することの重要性

先ほどの内閣府のBCP(業務継続計画)に関するガイドラインでは記載がないのですが、「受援計画」についても作成することが重要です。受援計画とは災害が発生した際に近隣の地方自治体や仲の良い自治体に、必要な支援物資や人員をどう要請するかを決めておく計画です。
熊本地震の際には受援計画がないことで支援物資が一箇所に集中して混乱したと言われています。受援計画を事前に作成することも、BCP(業務継続計画)と並んで重要な防災計画なのです。
以上、地方自治体などの行政がBCP(業務継続計画)を作成することの重要性について見てきました。行政そのものが大きく被災した際にどう行動するかを事前に決めておくことで、災害による被害を少しでも減らすことができるのです。

参考サイト▪︎内閣府「地方公共団体の業務継続・受援体制」