地震の大きさを表すガルとカインとは?震度とマグニチュードとの違い
何か災害が発生した際に、その災害がどれくらいの大きさか知るために被害状況で見る方法があります。例えばA地震では住宅10棟に被害をもたらし、B地震では住宅1,000棟に被害をもたらした場合には、B地震の方が被害状況は大きいと分かります。
しかし、災害による被害状況は、災害が発生した場所が都市部なのか田舎なのか、防災対策が整備された街で発生したのかどうか、などによって変わってきます。
そのために災害そのものの大きさを客観的な数値の単位で表現することが重要になってきます。災害の種類ごとに単位があるのですが、地震の場合には、「震度」「マグニチュード」の他に「ガル」「カイン」があります。
今回はそんな地震の大きさの単位について、地震の単位ガルとは何か、地震の単位カインとは何か、地震の単位震度とは何か、地震の単位マグニチュードとは何か、について書いていこうと思います。
地震の単位ガルとは何か
そもそも地震の単位ガルとは何かをひとことで言うと、「加速度」の単位であり、地震によって人や建物にかかる瞬間的な力のことであり、ガルは地震の揺れの大きさを表す単位として使われます。
加速度といきなり言われてもピンとこないかもしれませんが、辞書的に言えば加速度とは単位時間あたりの速度の変化率のことです。たとえば車を運転しているとして、止まっている状態から徐々にスピードをあげて行く場合には加速度は小さく、止まっている状態から急発進してアクセル全開にする場合には加速度は大きいです。
止まっている状態の車を急発進させると、座っている人は座席に強く押し付けられるような感覚がするかと思いますが、これは加速度による仕様です。
もともとガルは「それでも地球は動いている」と発言したことで知られている天文学者のガリレオ・ガリレイの名前から由来しており、正式な定義は下記の計算式になります。(計算式の算出方法まで理解する必要はありません)
(ガル:Wikipedia HPより引用)
このことからガルの値が大きい方が地震による揺れが大きいので、被害も大きくなりそうに見えますが、必ずしもそうではありません。人や建物に対する地震の被害は地震の周期や継続時間にも影響を受けるためです。
実際に過去の災害においても、阪神淡路大震災では最大900ガル、東日本大震災が最大2933ガル、関東大震災が300〜400ガルであったの対して、新潟県中越沖地震では2000ガル、2008年に発生した岩手・宮城内陸地震では4022ガルが計測されています。
ただし地震が発生した際に物体に与えられる力の大きさは、その物体の質量と地震の加速度の積になることから、昔から地震による揺れの尺度として慣例的に用いられています。
なお、ガルは計測地点における地震の揺れの大きさを表すので、震度と同じようにどこで観測されるのかによって、ガルの大きさは異なります。
地震の単位カインとは何か
地震に関する単位としてガル以外にもあまり知られていない単位にカインがあります。カインとは何かをひとことで言うと、地震動の最大速度で一秒間にどれだけ変位するかを表す単位です。
カインは地震の揺れの強さを速度で表すものであり、1カインは1秒間に1cm動いたことを意味します。先ほどのガルが瞬間的な加速度であるのに対して、カインはこれに時間を掛けて地震の強さを示しています。
少しイメージをしにくいかと思いますが、先ほどの自動車の例でもう一度説明すると、たとえ同じようにアクセルを踏んでも(同じ加速度で車を発進させたとしても)、どれだけの時間アクセルを踏んでいるかによって、乗車している人が座席に押し付けられる感覚は変わってくるかと思います。
建物に対する地震の影響を考えた場合にも、加速度の継続時間がどれくらい続いたのかによって、被害状況に大きな違いが出てきます。そのためにガルよりもカインの方が建物の被害状況をよく表現するとされ、地震の建物への影響をみる場合にはカインを用いるケースが多いです。
過去の災害の事例を見ても、100カインほどの大きさであった東日本大震災よりも、200〜300カインほどの大きさであった阪神・淡路大震災の方が倒壊した家具や建物の下敷きによる圧死が多いという結果になりました。
建物の耐震設計を考える上でも、何カインくらいまでの地震までならば耐久性があるのかを重視することがあるので、科学的に重要な単位になります。なおカインもガルや震度と同様に観測した場所での地震の大きさを表しています。
地震の単位震度とは何か
震度については小中学校の授業でも学ぶので知っている人は多いかと思います。震度とは何かをひとことで言うと、ある観測場所における地震による揺れの強さを表す単位です。
震度を計測するために日本全国に計測震度計があり、そこから自動的に計算された計測速度から換算して気象庁が震度の大きさを発表しています。
気象庁では震度について震度0〜震度7までの震度階級で表現しており、震度の値が大きい方がより揺れの大きさの強い地震になります。この表現方法は日本独自のものであり、周辺国以外では使用されていません。
(震度について:気象庁HPより引用)
地震の単位マグニチュードとは何か
マグニチュードについても小中学校の授業で学んだかと思いますが、マグニチュードとは地震そのものの規模を表す単位です。震度・ガル・カイルは1つの地震でも観測場所によってその大きさが異なりますが、マグニチュードは1つの地震で1つの大きになります。
マグニチュードは震度などのように直接観測することができないので、各地の揺れの大きさから推測します。マグニチュードが 1 増えると地震のエネルギーは約31.6倍になり、マグニチュードが 2 増えると地震のエネルギーは1000倍になる。
規模の大きな地震でも遠く離れていれば地面の揺れは小さいですし、逆に小規模の地震でも近くで発生すれば大きな揺れが記録されます。このために、地震の規模の大小を公平に判断するためにマグニチュードによって地震の大きさを表現することが必要になります。
以上、地震の大きさの単位について、地震の単位ガルとは何か、地震の単位カインとは何か、地震の単位震度とは何か、地震の単位マグニチュードとは何か、について見てきました。
日本は地震大国であり、今までに多くの地震によって被害をもたらされてきました。今後も南海トラフ地震や首都直下地震が発生するのではないかと言われており、地震へどれだけ防災対策ができているのかが今後を左右するでしょう。
参考サイト▪︎厚生労働省「ガル」