土砂災害の種類と警報・避難を行うポイントについて
ひとことに「災害」と言っても多種多様な災害が存在しますが、その中のひとつとして大雨や地震によって発生する土砂災害が存在します。平成26年に広島県で発生した土砂災害は記憶に新しい人も多いかと思います。
地震や台風に比べると、土砂災害はそこまで耳にする機会が少ないかもしれませんが、短時間の集中豪雨が増加傾向にある昨今の降雨状況を見ると、土砂災害の防災対策を行うことの重要性は高いと言えます。
今回はそんな土砂災害について、土砂災害はどんな特徴があるのか、土砂災害に対して警報や避難を行う際のポイントなどについて書いていこうと思います。
土砂災害の種類と特徴について
ひとことに「土砂災害」と言っても、土砂災害の中には「がけ崩れ」「地すべり」「土石流」などいくつかの種類があります。「がけ崩れ」とは斜面が急な山や崖が崩れ落ちる現象であり、「地すべり」は穏やかな斜面で地面が滑るように動き出す現象であり、「土石流」は水と土砂や石が一緒になって勢いよく流れてくる現象です。
(土砂災害発生件数:国土交通省より引用)
国土交通省が発表している資料によると、それぞれの土砂災害が年間にどれくらい発生しているかは上記のグラフのようになっています。これを見ると土砂災害の中でも特にがけ崩れは発生する件数が多いことが分かります。
土砂災害はその特徴として、なかなか事前にどのエリアで土砂災害が発生するのか予測することが困難であり、見かけに比べて土砂等の移動速度が速く逃げ切ることが難しいことがあげられます。土砂災害が発生する原因としては、地震や大雨がきっかけになることが多く、それが予測を難しくしているひとつの要因になっています。
土砂災害では平成26年に広島で発生した土砂災害がここ最近では甚大な被害をもたらしており、死者・行方不明者は76人にのぼっています。広島の土砂災害では夜中に発生したことや、山の斜面部分まで住宅地が伸びていたことなど、不幸にも多くの悪条件が揃ってしまっていました。
広島での土砂災害以外にも、平成28年に発生した熊本地震による土砂災害では15人、平成29年に発生した九州北部豪雨では41人が犠牲になりました。
土砂災害で避難勧告・避難指示をするポイント
内閣府が行った「避難勧告等に関するアンケート調査結果」によると、避難勧告を発令する際のきっかけに利用したものとして「土砂災害警戒情報」を利用したという割合が最も多く70%近くの自治体がこれを参考にしていました。
その他にも気象庁が発表しているメッシュ情報や大雨警報も40%前後の自治体が避難勧告・避難指示をする際に参考にするものとして利用していました。
避難勧告の対象範囲については、土砂災害警戒区域・土砂災害危険区域であるかどうか、メッシュ情報で危険度が高まったエリアであるかどうかを参考にしている自治体が最も多かったですが、市町村全体で発令している自治体も20%以上ありました。
避難所はほとんどの自治体で職員が自ら開場しており、発令区域に関する全ての避難所を開設したところと、発令区域に関する一部の避難所を開設したところはおよそ半分半分でした。
避難指示の内容は50%以上の自治体が立ち退き避難である一方で、ただ単に避難してくださいというだけの自治体も30%近くありました。避難準備・高齢者等避難開始を発令するきっかけとしては大雨警報が出たタイミングでという自治体が60%近くと最も多く、対象範囲も市町村全体で行うところが一番多い結果でした。
夜中における土砂災害の避難警報について
土砂災害における警報を出すタイミングとしてよく話題に上がるのが、夜中に土砂災害の危険性が高まった場合にどうするかということです。大雨が降っていて明かりのない夜中に避難警報を出すと、逆に避難している最中に怪我をするリスクが高くなるために、なかなか自治体としても夜中の避難警報が出せないのです。
広島の土砂災害も発生が夜中であり、議題にもよくあがりますが、夜中の避難警報を回避するための方法として、たとえ空振りになる可能性が高くても昼のうち(16:00〜18:00)に避難警報を出すという考え方があります。
気象庁が公表しているデータに、注意報と警報の危険度を色分けして時系列で予測するものがあります。このデータや同じく気象庁が公表しているメッシュ情報等を参考にして、夜中に土砂災害が発生する可能性が出てきた場合には、早めに警報避難を出すというものです。
(危険度を色分けした時系列:気象庁より引用)
土砂災害の対応をするに当たって注意すべきこと
土砂災害が発生するのか予測するに当たって気象庁の公表している情報は参考になります。先ほどの危険度を黄色や赤色で色分けした時系列のグラフも参考になりますし、土砂災害警戒判定メッシュ情報も参考になります。
(土砂災害警戒判定メッシュ情報:気象庁より引用)
地図上で色分けして土砂災害が発生する可能性を予報しているので、この土砂災害警戒判定メッシュ情報で危険エリアとなっていて、なおかつそのエリアが土砂災害警戒区域・土砂災害危険区域であれば、いつ土砂災害が発生してもおかしくないと考えるべきです。
できるだけ早め早めで土砂災害の予測を行い、危険区域ないの住民に対しては早めに自主的な避難を促し、避難しない場合でも、いざという時は近くて安全な場所へと移動するように勧めることも有効であると言えます。
以上、土砂災害の種類や特徴と警報・避難のポイントについて見てきました。土砂災害にどう向かい合うかに正解はなく、事前に正解を得ることはできないので結果論のようになってしまうこともありますが、事前に防災計画をしっかりと練っておくことで、被害を軽減することができます。
参考サイト▪︎気象庁「土砂災害警戒情報・土砂災害警戒判定メッシュ情報」