広域災害救急医療情報システム(EMIS)とは?

大きな災害が発生した際にはそれだけ多くの負傷者が発生する可能性があります。災害による負傷者は病院へと運ばれますが、そもそも病院も被災しており平常時と比べると人員も設備・備品も少ない限られたリソースの中で医療行為を行う必要があります。
一方で災害による負傷者が大量に病院に搬送されるので、治療しなければならない患者の数は平常時に比べて飛躍的に増加してしまいます。
このように災害時の病院は需要と供給の観点から見た場合に、そのバランスが大きく崩れてしまいます。このような状況を少しでも改善するためのシステムとして広域災害救急医療情報システム(EMIS)があります。
今回はそんな広域災害救急医療情報システム(EMIS)について、そもそも広域災害救急医療情報システムとは何か、災害時の医療体制について、などについて書いていこうと思います。

広域災害救急医療情報システム(EMIS)とは何か

そもそも広域災害救急医療情報システムとは何かについてひとことで言うと、災害時の医療情報をインターネット上で共有し、被災地での医療情報を集約して提供するシステムのことです。
英語で書くとEmergency Medical Information Systemであり、その頭文字をとってEMISと呼ばれることもあります。
阪神淡路大震災が発生した際に医療機関同士で情報をうまく共有することができないゆえに、特定の病院に患者が集中するなど効率的な災害対応ができなかったことを教訓として2006年から運用が始まりました。

参照記事
災害医療コーディネーターとは?その役割について

災害時には医療機関は限られたリソースの中で膨大な数の患者を対応しなければならず、いかに効率的に災害時の医療行為を行うのかは多くの命に関わる重要な課題になっています。
被災地全体で効率的な医療行為を行うためには、情報をうまく共有することが必要不可欠であり、広域災害救急医療情報システムはまさにその災害時の医療に関する情報共有を通して、効率的な災害対応を行おうとしています。
日頃は地域の医療機関同士は独立していることが多いですが、情報の共有によって医療機関同士を組織化することを広域災害救急医療情報システムは目的としており、都道府県、市区町村、医師会、保健所、消防機関などをネットワークで繋ぎ、災害時には医療機関の情報がシステムに入力されていきます。
広域災害救急医療情報システムでは、医療機関と行政、関係機関との情報共有ツールとして、病院被害情報、患者受け入れ情報、避難所の情報、病院のキャパシティー、DMATの活動状況などが情報共有されます。

(広域災害救急医療情報システム:DMAT HPより引用)
広域災害救急医療情報システムによって災害時の医療関連の情報を共有することで、被災地全体で効率的な医療行為を行うことができると考えられています。

災害時の医療体制について

このように災害時において医療機関は平常時とは違った役割が求められて、その責任はより重くなります。そのために医療機関では災害に備えてさまざまな準備が行われています。
例えばDMAT(災害派遣医療チーム)もそんな災害時の医療体制を充実させるための仕組みの一つであり、災害発生から48時間以内に医療チームが被災地に派遣されます。

他にも、病院においてBCPを策定するのも一つの災害に備えた準備になります。政府は災害拠点病院についてはBCPの策定をその指定要件としており、災害時にも病院として重要業務を遂行することができるような体制作りが行われています。
以上、広域災害救急医療情報システム(EMIS)について、そもそも広域災害救急医療情報システムとは何か、災害時の医療体制について、などについて見てきました。
災害時には大量の負傷者が発生することがあり、その災害対応をする上で広域災害救急医療情報システムには大きな期待は寄せられています。

参照記事
災害拠点病院と一般医療機関におけるBCP策定方法について

参考サイト▪︎広域災害救急医療情報システム