建物の耐震診断・耐震補強と新耐震基準について
大きな地震が発生すると多くの住民が犠牲になることがありますが、その大きな理由は地震によって建物が倒壊して、その下敷きとなるためです。
実際に阪神淡路大震災の際には耐震性が低い建物に住んでいた被災者の多くはその下敷きになってしまったという事態が発生しました。
一方で東日本大震災ではその教訓を活かして、公共施設などでは耐震性を高めるための耐震補強を行なっており、それが理由に地震による倒壊を抑えることができ、防災拠点を維持することができたと言われています。
今回はそんな建物の耐震性について、そもそも建物の耐震性とは何か、新耐震基準とは何か、建物の耐震診断・耐震補強、などについて書いていこうと思います。
建物の耐震性とは何か
そもそも建物の耐震性とは何かをひとことでいうと、地震の揺れなどに対して、建物がどれくらい頑丈であるのかその性能を示したものになります。
災害という観点から見ると、市役所や学校、避難場所などは耐震性を高めておくことで、災害時の防災拠点として機能させる必要がありますし、個々の住宅に関しても、耐震性を高めることで安心して暮らすことができます。
(ガレキに埋もれた役場の看板:災害写真データベースより画像引用)
建物の構造安全性を示すために、その建物が建つ地域の地震を考慮した建築基準法で要求される地震荷重に対して1.25倍や1.5倍の耐力を確保するように耐震性を高めて、その高めた値を耐震性能として表示する場合があります。
建物の耐震性は高ければその分だけ震災に強い建物になる一方で、耐震性のみを考慮した建物設計にするわけにもいかないので、一般的には建築基準法の建物耐震基準を耐震性をみる一つの目安にします。
新耐震基準とは何か
建物については耐震性が全くない家を建築してしまうと、災害時に大きな被害が発生して危険なために、地震大国である日本では、大きな地震を経験して行く過程でその都度、建物の設計指針が改善されてきました。
建物の耐震性については建築基準法によって規定されており、建築基準法そのものは地震があるたびに改正が行われてきたのですが、大きな転換期は1981年に施行された「新耐震設計基準」の制定です。
この新耐震設計基準は1978年に発生した宮城県沖地震を反映して改正されたものであり、現在においても地震に強い家かどうかを判断する際には、この新しい耐震基準に則って作られたかどうかで判断されることが多いです。
建物の耐震診断・耐震補強
実際に建物の耐震診断・耐震補強を行おうとした場合の手順としては、まず現状の耐震性がどれくらいあるのかを耐震診断し、次に耐震補強の目標を設定します。
耐震補強の目標が設定できたら、次にその目標に達するための補強方法を費用対効果などの面から検討し、最後に耐震補強工事に入ります。
耐震診断費用は建物の建設時期、使い勝手、劣化具合、規模などにもよって変化するために一概には言えないのですが、鉄骨造・鉄筋コンクリート造では600円〜2,500円/㎡、木造であれば一棟100千円程度と言われています。
耐震診断期間は規模にもよりますが現地調査こみで2〜4ヶ月、木造住宅で数日程度と言われています。
耐震強化費用は工事内容によってもばらつきがありますが、40〜165千円/坪程度で、戸建住宅の場合には100〜200千円/坪程度とされています。
耐震診断及び耐震補強工事については自治体から助成金が出ることもあるので、仮に耐震化を検討している場合には、助成金についても合わせてご確認することをお勧めします。
以上、建物の耐震性について、そもそも建物の耐震性とは何か、新耐震基準とは何か、建物の耐震診断・耐震補強、などについて見てきました。
建物の耐震性は地震からの被害をできるだけ小さく抑えるためには極めて重要なことであり、今後もより耐震性の高い建物の普及が望まれています。
参考サイト▪︎国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」