台風による災害を減らすために予報を活用して防災を行う
日本は災害大国と言われていますが、数多くある災害の一つに台風があります。秋になると「大型の強い台風○○号が北上しています!注意してください!」と言ったようなアナウンスを聞くことが多いかと思います。
日本で住んでいる限りは誰もが何度も台風を経験するので慣れている人も多いですが、それでも毎年多くの人が台風によって犠牲になります。
今回はそんな台風について、そもそも台風とはどういったものなのか、過去の台風被害にはどんなことがあったのか、台風によってどんな被害がもたらされるのか、台風による予報はどう見ればいいのか、などにつて書いていこうと思います。
台風とは何か
そもそも台風とは何かについては誰もが何となく知っていると思います。台風が来ると強い雨が降って、強い風が吹くので不要な外出は控えなければならないと何となくであれば誰もが認識しているかと思います。
台風とは何かその定義について、もう少し専門的に言うと、熱帯の海上に発生する熱帯低気圧のうち、北西太平洋か南シナ海に位置しており、なおかつ域内の最大風速が一定以上のものを台風と呼びます。
台風はなぜ発達するのか
もともとなぜ台風が発生して発達していくのかについてですが、暖かい海面から水蒸気が発生し、それが上昇して凝結し、雲になる際に放出される熱をエネルギーとして発達していきます。
ただし台風は移動に伴って地上や海面と摩擦が生じるので、次第にエネルギーを失って弱くなっていきます。特に地上に上陸した際にはエネルギー源である水蒸気を失うので、急速に衰えていくことが多いです。
台風はなぜ北東に進んで行くのか
台風は日本に上陸するまでは北西の方向に進んで行き、日本に上陸すると北東の方向に進んで行くことがかなり多いですが、これは風の影響を受けるためです。
日本に上陸するまでは低緯度で常時東風が吹いているので台風は西に流されながら北西に進みます。そして中緯度に来ると偏西風が吹いているので台風は東に流されます。ちなみにそもそも北上する理由は地球の自転の影響を受けています。以上の理由から、台風は日本列島に沿うような形で進んで行くのです。
台風の大きさと強さについて
気象庁から発表される台風については、台風のレベルを表すために「台風の大きさ」と「台風の強さ」を表現しています。
台風の大きさについては、台風の強風域の半径の大きさで表します。台風の風速が一定以上の半径が500km〜800kmであれば「大型(大きい)」と表現され、800km以上であれば「超大型(非常に大きい)」と表現されます。
台風の強さについては、最大風速の速さによって決まるのですが、最大風速33m/s〜44m/sは「強い」、最大風速44m/s〜54m/sは「非常に強い」、最大風速54m/s以上は「猛烈な」と表現されます。
そのために、例えば半径600kmで最大風速50m/sの台風であれば、“大型の非常に強い台風”と表現することになります。
過去の台風による災害
日本は今までに台風によって度重なる被害を受けてきました。過去の大きな台風による災害としては下記のようなものがあります。
過去の台風被害①:枕崎台風
日本で過去に発生した台風の被害として有名なものに枕崎台風があります。枕崎台風は1945年に発生し、第二次世界大戦直後の広島に大きな被害をもたらしました。気象情報の発信や防災に対する準備不足が課題となり、水防法が設立される一つのきっかけにもなりました。
過去の台風被害②:伊勢湾台風
台風による過去の大規模災害をもたらしたものに伊勢湾台風があります。伊勢湾台風は1959年に発生し、愛知県付近を中心に大きな被害をもたらしました。この台風がきっかけで、災害対策基本法や激甚災害法が作られました。
枕崎台風や伊勢湾台風以外にも日本では数多くの台風災害が発生しており、2004年には観測史上最多の10個の台風が上陸して甚大な被害をもたらしました。このように日本は地理的な問題から台風とは切っても切れない関係にあり、台風の防災計画を立てておくことが重要となります。
台風による災害被害について
台風の風による災害被害
当たり前ですが台風が発生すると強い風が吹きます。台風の風は一般的に半円の右側の方が偏西風の影響も受けて強くなり、左側は逆に弱くなります。また、これも有名ですが、中心は「台風の眼」と呼ばれており、比較的に風は弱くなります。
また、台風はぐるぐると回っているので、台風が近づいてくる時の風向きと、台風が遠ざかる時の風向きは逆になるのも特徴と言えます。
地上に上陸した台風の風を考える上では、陸の地形にも影響を強く受けます。例えば谷筋、尾根、入江、海峡、岬などでは台風の風は強くなり、橋の上やトンネルの出入り口では強風にあおられることがあります。また都市部では高い建物があるとビル風と呼ばれる強風が発生することがあります。
この他にも台風に伴って、竜巻が発生したり、フェーン現象から火災が発生したりする可能性もあります。
台風の雨による災害被害
台風には風による災害被害以外にも、雨による災害被害が発生することもあります。台風は積乱雲が集まったものなので、広範囲に長時間の雨を降らせます。台風の付近では猛烈な暴風雨となることがありますし、台風の外側200km〜600kmにわたって断続的に激しい雨が降ることがあります。
この台風の雨によって洪水や浸水が発生して大きな災害被害をもたらすことがあります。
台風による高潮・高波の災害被害
台風が海側から陸側に向かって吹くと、「吹き寄せ効果」から海水が海岸に吹き寄せられて海面の上昇が発生します。一般的に高潮の大きさは台風の風速の2乗に比例すると言われており、満潮時と台風の到来が重なれば災害被害が拡大する可能性があります。
また、台風に伴って海の波が高くなり高波が発生する可能性もあります。高波についても高潮と同様に注意をする必要があります。
台風の予報
気象庁では台風からの被害を軽減するために様々な予報情報を発信しています。
台風の予報①:3日進路予報
これは予報ではありませんが、気象庁のサイトから台風の進行状況について実況で確認することができます。1日に8回3時間毎に台風の実況は発表されています。
(台風情報の見方:気象庁HPより引用)
台風の実況については、上記の写真のような地図が使われます。×記を囲っている赤い太マルが「暴風域」で、それを大きく囲む黄色いマルが「強風域」、進行報告に書いてある白い線が「予報円」であり、それを囲む赤い線が「暴風警戒域」です。
台風の予報②:5日進路予報
台風が3日以降も引き続く場合には、5日進路予報が提供されます。これは台風の進路方向の予測を5日先まで行うものですが、確実性等の観点から予報円のみで表現されています。
(台風情報の見方:気象庁HPより引用)
台風の予報③:暴風域に入る確率
市町村ごとに暴風域に入る確率を示したものが公表されています。自分の住んでいる地域の危険度が分かります。
(台風情報の見方:気象庁HPより引用)
この他にも暴風域に入る確率を地図上に分布図で色分けしているものもあります。台風の進路方向と暴風域の関係を視覚的に見ることができます。
(台風情報の見方:気象庁HPより引用)
これらの情報の他にも、気象庁からは台風に関する情報を文字に起こして発表したものや、海上警報の情報等についても発表されており、台風の災害から身を守るために活用することができます。
台風の予報情報を活用する際の注意
台風の予報情報を見る際に注意すべき点について、いくつか述べていきます。まずはじめが予報円の大きくなるといって台風が大きくなるわけではないということです。先ほどの3日進路予報や5日進路予報では、予報円が少しずつ大きくなっていきますが、これは決して台風が大きくなっているわけではありません。
予報円とも関わるのですが、3日進路予報や5日進路予報における中心線はあくまで台風が通る可能性が高いところを予測したものであり、この中心線通りに台風が進むわけではありません。
また、進行中の台風を過去の台風と比べることもありますが、たとえ大きさ、強さ、進路が似ている台風であっても、災害被害の状況は異なる場合があるということを頭に入れておく必要があります。
以上、そもそも台風とはどういったものなのか、過去の台風被害にはどんなことがあったのか、台風によってどんな被害がもたらされるのか、台風による予報はどう見ればいいのか、などにつて見てきました。
日本は台風とは切っても切れない関係にあるので、事前にしっかりと防災対策をしておき、予報をしっかりと読み取ることが重要になってきます。
参考サイト▪︎気象庁「台風情報の種類と表現方法」