プロアクティブの原則とは?危機管理を行う上での考え方

災害の規模が大きければ大きいほど、被害の大きなエリアからは正確な情報が入ってきませんし、「オオカミ少年効果」という言葉があるように、本当は避難しなくてもいいのに避難行動を促し続けたら、いざ本当に避難しなければならなくなった際に、どうせ今回も大したことないだろうと避難しなくなってしまう可能性もあります。
しかし一方で、災害対応は多少大げさに積極的に行くべきだという考え方もあります。この考え方を「プロアクティブの原則」というのですが、危機管理を行う上での考え方の一つとして知られています。プロアクティブの原則とは何か詳しく見ていこうと思います。

プロアクティブの原則とは何か

災害対応は不確実な要素が多い中で判断しなければならないことが多いので、なかなか思い切った行動をするのが難しいのが実際のところだと思います。当然、正確な情報を言わなければいけないのですが、何が確かな情報なのか分からない中で判断しなければならいことが多々発生します。
プロアクティブの原則とは何かをひとことで言うと、危機管理をするにあたっては、失敗を恐れずに積極的に行動をすべきだという考え方です。プロアクティブの原則は、3つの原則から成り立っています。

プロアクティブの原則①:疑わしいときは行動せよ

プロアクティブの原則の1つ目は、「疑わしいときは行動せよ」というものです。例えば今まで何度も大雨警報が出ていて問題なかった中で、また大雨警報がでたとします。
そんな時には、どうせ今までも問題なかったし今回も大丈夫だろうと考えるのは、ある意味自然な流れかと思います。しかし、疑わしいときは行動せよという原則に基づいて、それでも今回はもしかしたら本当にやばいのかもしれないと思いしっかりと行動することが重要になります。

プロアクティブの原則②:最悪事態を想定して行動せよ

プロアクティブの原則の2つ目は、「最悪事態を想定して行動せよ」というものです。人間はどうしてもまさか自分が災害に巻き込まれるわけがないのだろうと思ってしまう生き物です。
正常化バイアスなどと言われることもありますが、希望的な観測を持たずに、常に最悪の状態を想定して行動することが重要になります。

参照記事
正常性バイアス(正常化の偏見)とは?災害心理学について

プロアクティブの原則③:空振は許されるが見逃しは許されない

プロアクティブの原則の3つ目は、「空振は許されるが見逃しは許されない」というものです。避難行動を促す際には、空振りしてしまい、実際には避難する必要がないけど避難してしまう場合も当然あります。
しかし、空振は許されるが見逃しは許されないという原則が示すと通り、空振りはある意味仕方のないものですが、避難行動を促すべきだったけど大丈夫だと思って促さなかったという見逃しは決して許されません。
このようにプロアクティブの原則は、疑わしいときは行動せよ、最悪事態を想定して行動せよ、空振は許されるが見逃しは許されない、という3つの原則に則って成り立っています。

(鬼怒川堤防決壊現場:災害写真データベースより画像引用)

プロアクティブの原則の限界

ただし、危機管理をする上でこのプロアクティブの原則は重要だという意見がある一方で、プロアクティブの原則には限界があるという意見も存在しています。
例えばプロアクティブの原則に則って毎回避難所を開設していたのでは、職員が疲弊してしまい限られた資源の中で防災対応をしている自治体ではすぐに制度が破綻してしまうためです。
以上、プロアクティブの原則にについて見てきました。危機対応は不確かな中で行う必要があり判断に迷うことは必ずありますが、この原則を頭の隅にでも置いておくことで、より良い判断ができるかもしれません。

参照記事
スマトラ沖地震、ハリケーン・カトリーナ、9.11における生存者の共通点

参考サイト▪︎消防防災科学センター「プロアクティブの原則」