自閉症の人への災害時の対応で気をつけるべきポイント
災害が発生して自分の自宅が倒壊した、または倒壊しそうな状況の時には、自宅にいたのでは危険なので避難所で生活することになることがあります。
体育館を簡単に仕切っただけの避難所での生活ではプライバシーの配慮にも限界があり、多くの制約の中で被災生活をする必要があります。
多種多様な住民が一つの大きい体育館で生活すると当然トラブルも発生するのですが、特に高齢者や障害者などの災害時用配慮者への配慮は必要になります。
今回はそんな災害時要配慮者の中でも自閉症の人への災害時に気をつけるべきポイントについて、自閉症の人が災害時に起こす可能性のある症状、災害時要援護者名簿の整備、自閉症の子供を持つ家族が災害時に気をつけること、などについて日本自閉症協会が公表している「自閉症の人たちのための防災・支援ハンドブック」を参考にしながら書いていこうと思います。
自閉症の人が災害時に起こす可能性のある症状
そもそも自閉症とは何かをひとことで言うと、社会性と対人関係の障害、コミュニケーションや言葉の発達の遅れ、行動や興味の偏りなどが発達段階で現れる先天的な発達障害のことです。
自閉症の人には知的障害のある人もない人もいます。自閉症の特性が生活をしていく上で困難になることもありますが、優れた記憶力や能力値の高さなどの強さも持っています。
しかし、災害時のような非日常が突発的におとずれると状況の変化を読み取ることができずに、第三者ではどう対応すれば良いのかわからない言動を取ることがあります。
具体的には、災害の怖さや避難の必要性をなかなか理解することができずに、危険な状況であったとしても身を守ったり、避難をすることができなかったりすることがあります。
他にも、避難所といういつもとはかなり異なる環境で変化に対する不安や抵抗から混乱をしてしまうことや、話しかけても反応しなかったり、オウム返しで言葉を返されたりしてコミュニケーションを取ることができないこともあります。
特に一斉に大多数に対して話しかけている時には情報がうまく伝わっていないことがあるので、個別の声かけをする必要があります。
また、感覚の過敏さや、逆に感覚の鋭さがあるので、ケガや病気に気が付きにくかったり、大きな声を出して怯えたりすることもあります。
自閉症の人が災害時に起こす可能性のある症状としてはこのようなことがありますが、それを見ても大声で叱ったりすることはせずに、気持ちを沈めるための行動を取る必要があります。
災害時要援護者名簿の整備
今回の自閉症の人もそうですが、災害時にはその他にも高齢者や障害者など、自力で災害から身を守ることが困難な要配慮者については、事前に災害時要援護者名簿を作成して、災害時にはしっかりと漏れなく支援できているのかを確認する必要があります。
しかし、東日本大震災の際には個人情報の関係で対象者名簿の整備が難航したり、地域内での関係希薄化から支援が困難になっていたり、支援対象者ごとの個別支援プランの作成が未整備であったなどという問題がありました。
日本では今後、首都直下地震や南海トラフ地震などの広域的な災害の発生が予想されていますが、そのような激甚災害が発生しても機能する要配慮者への支援体制の構築が必要になります。
自閉症の子供を持つ家族が災害時に気をつけること
次に自閉症の子供を持つ家族が災害時に気をつけるべきことについて書いて行こうと思います。東日本大震災の際には自閉症の子供を持つ家族が、周囲へ気遣いをするあまり疲弊する事態が発生しました。
少しでもその負担を軽減するためには、まずは無理に遠慮をせずに周りの支援者にサポートを求めることが重要になります。災害時にはデイサービスや特別支援学級は早めに再開されることがあるので、時には自分のケアも大事です。
同じような自閉症の子供を持つ親同士で話し合っておしゃべりをする時間を設けることも必要です。
また、自閉症の子供ではない兄弟姉妹へのフォローも重要になってきます。兄弟姉妹にも配慮することで、ちゃんと気にかけているとアピールをする必要があります。
以上、災害時用配慮者の中でも自閉症の人への災害時に気をつけるべきポイントについて、自閉症の人が災害時に起こす可能性のある症状、災害時用援護者名簿の整備、自閉症の子供を持つ家族が災害時に気をつけること、などについて見てきました。
自閉症を持つ子供の親は災害時には特に苦労をすることが多いですが、周りの支援者の力を借りて、支援体制を構築していくことが期待されています。