土砂災害とは?斜面崩壊(崖崩れ)、地すべり、土石流などの災害

災害にはいろんな種類があります。地震、洪水、火山噴火など、毎年のように日本では何かしらの災害が発生していますが、土砂災害もその中の一つです。平成26年8月の豪雨によって広島で発生した土砂災害については記憶に新しい人も多いかと思います。
日本では過去に何度も土砂災害が発生しており、多くの人が犠牲になってきています。今回はそんな土砂災害について、そもそも土砂災害とは何か、斜面崩壊(崖崩れ)とは何か、地すべりとは何か、土石流とは何か、などについて書いていこうと思います。

土砂災害とは何か

そもそも土砂災害とは何かをひとことで言うと、山地の斜面や渓谷で、土や岩石が下方に移動することによってもたらされる災害のことです。土砂災害の中にもいくつもの種類があり、斜面崩壊(崖崩れ)、地すべり、土石流などがあります。これらの現象を一括りにして、土砂移動現象やマス・ムーブメントなどと言います。土砂災害はこの土砂移動現象によってもたらされる災害の総称です。
日本は国土の70%が山地であることから、他の国と比べても土砂災害が発生することが多いと言われています。土砂災害は、豪雨、地震、融雪、火山活動、侵食などによって発生することが多いです。
気象庁では土砂災害の発生を事前に警告するために、土砂災害警戒判定メッシュ情報を公開しており、土砂災害が発生する可能性が高まった場合には土砂災害警戒情報が発令されます。
平成26年8月に広島市で発生した土砂災害ではごく狭い範囲に集中豪雨が深夜に発生したこともあり、77人の死者を出す大災害になりました。

斜面崩壊(崖崩れ)とは何か

斜面崩壊(崖崩れ)とは、斜面表層の土砂や岩石が地中のある面を境にして滑り落ちる現象であり、土砂崩れ、山崩れ、崖崩れなどと言われることもあります。
もともと面の地層は常に下に引っ張られていますが、地層がこれに抵抗する力を働かせていることで、斜面の移動を防いでいます。しかし、大雨や地震などによって、地層が下に引っ張られる力が上回ると、この面が断ち切れて上に乗っている土砂が崩れ落ちるのが斜面崩壊(崖崩れ)の原因です。

参照記事
斜面崩壊(がけ崩れ)とは?そのメカニズムと対策について

地すべりとは何か

地すべりとは何かをひとことで言うと、斜面にある土砂が非常にゆっくりと動いて崩壊する現象です。先ほどの斜面崩壊と似ていますが、動きの速いものを斜面崩壊と呼び、動きの遅いものを地すべりと呼ぶことで区別しています。
地すべりは斜面崩壊と違って動きが遅いので人命に関わるような災害になることは少ないですが、該当エリアは長期間の立ち入り禁止や道路閉鎖などになることがあります。地すべりが発生する原因は斜面崩壊が発生する原因と同じです。

土石流とは何か

土石流とは何かをひとことで言うと、土砂が水と混じり合って、河川や渓谷を下流する現象のことです。大雨によって山崩れが発生し、その土砂が砕けながら谷間に滑り落ち、谷の水と混じり合って谷底を高速で流れるケースが土石流ではよくあるタイプです。
谷底が急であればあるほど、土砂と水の流れる運動速度が速くなるので、ぶつかり合いも激しくなります。土石流の流れの速さは20km/h〜40km/hなので、人が全力で走るよりも土石流の方が圧倒的に速く、一瞬で住宅を飲み込んでしまいます。
土石流はいざ発生したら逃げきれないことが多いので、大雨が降っている際には事前に土砂災害警戒地域に住んでいる住民は避難させるなどの行動を取っておくことが重要です。
以上、土砂災害について、そもそも土砂災害とは何か、斜面崩壊(崖崩れ)とは何か、地すべりとは何か、土石流とは何か、などについて見てきました。
日本では今までに土砂災害によって多くの被害を受けてきましたが、少しでも被害を抑制するために、土砂災害が発生する可能性のあるエリアについては日頃から注意する必要があると言えます。

土砂災害の種類と特徴について

ひとことに「土砂災害」と言っても、土砂災害の中には「がけ崩れ」「地すべり」「土石流」などいくつかの種類があります。「がけ崩れ」とは斜面が急な山や崖が崩れ落ちる現象であり、「地すべり」は穏やかな斜面で地面が滑るように動き出す現象であり、「土石流」は水と土砂や石が一緒になって勢いよく流れてくる現象です。

(土砂災害発生件数:国土交通省より引用)
国土交通省が発表している資料によると、それぞれの土砂災害が年間にどれくらい発生しているかは上記のグラフのようになっています。これを見ると土砂災害の中でも特にがけ崩れは発生する件数が多いことが分かります。
土砂災害はその特徴として、なかなか事前にどのエリアで土砂災害が発生するのか予測することが困難であり、見かけに比べて土砂等の移動速度が速く逃げ切ることが難しいことがあげられます。土砂災害が発生する原因としては、地震や大雨がきっかけになることが多く、それが予測を難しくしているひとつの要因になっています。
土砂災害では平成26年に広島で発生した土砂災害がここ最近では甚大な被害をもたらしており、死者・行方不明者は76人にのぼっています。広島の土砂災害では夜中に発生したことや、山の斜面部分まで住宅地が伸びていたことなど、不幸にも多くの悪条件が揃ってしまっていました。
広島での土砂災害以外にも、平成28年に発生した熊本地震による土砂災害では15人、平成29年に発生した九州北部豪雨では41人が犠牲になりました。

参照記事
土砂災害防止法とは?その概要と解説について


土砂災害で避難勧告・避難指示をするポイント

内閣府が行った「避難勧告等に関するアンケート調査結果」によると、避難勧告を発令する際のきっかけに利用したものとして「土砂災害警戒情報」を利用したという割合が最も多く70%近くの自治体がこれを参考にしていました。
その他にも気象庁が発表しているメッシュ情報や大雨警報も40%前後の自治体が避難勧告・避難指示をする際に参考にするものとして利用していました。
避難勧告の対象範囲については、土砂災害警戒区域・土砂災害危険区域であるかどうか、メッシュ情報で危険度が高まったエリアであるかどうかを参考にしている自治体が最も多かったですが、市町村全体で発令している自治体も20%以上ありました。

避難所はほとんどの自治体で職員が自ら開場しており、発令区域に関する全ての避難所を開設したところと、発令区域に関する一部の避難所を開設したところはおよそ半分半分でした。
避難指示の内容は50%以上の自治体が立ち退き避難である一方で、ただ単に避難してくださいというだけの自治体も30%近くありました。避難準備・高齢者等避難開始を発令するきっかけとしては大雨警報が出たタイミングでという自治体が60%近くと最も多く、対象範囲も市町村全体で行うところが一番多い結果でした。

夜中における土砂災害の避難警報について

土砂災害における警報を出すタイミングとしてよく話題に上がるのが、夜中に土砂災害の危険性が高まった場合にどうするかということです。大雨が降っていて明かりのない夜中に避難警報を出すと、逆に避難している最中に怪我をするリスクが高くなるために、なかなか自治体としても夜中の避難警報が出せないのです。
広島の土砂災害も発生が夜中であり、議題にもよくあがりますが、夜中の避難警報を回避するための方法として、たとえ空振りになる可能性が高くても昼のうち(16:00〜18:00)に避難警報を出すという考え方があります。
気象庁が公表しているデータに、注意報と警報の危険度を色分けして時系列で予測するものがあります。このデータや同じく気象庁が公表しているメッシュ情報等を参考にして、夜中に土砂災害が発生する可能性が出てきた場合には、早めに警報避難を出すというものです。

(危険度を色分けした時系列:気象庁より引用)

土砂災害の対応をするに当たって注意すべきこと

土砂災害が発生するのか予測するに当たって気象庁の公表している情報は参考になります。先ほどの危険度を黄色や赤色で色分けした時系列のグラフも参考になりますし、土砂災害警戒判定メッシュ情報も参考になります。

(土砂災害警戒判定メッシュ情報:気象庁より引用)
地図上で色分けして土砂災害が発生する可能性を予報しているので、この土砂災害警戒判定メッシュ情報で危険エリアとなっていて、なおかつそのエリアが土砂災害警戒区域・土砂災害危険区域であれば、いつ土砂災害が発生してもおかしくないと考えるべきです。
できるだけ早め早めで土砂災害の予測を行い、危険区域ないの住民に対しては早めに自主的な避難を促し、避難しない場合でも、いざという時は近くて安全な場所へと移動するように勧めることも有効であると言えます。
以上、土砂災害の種類や特徴と警報・避難のポイントについて見てきました。土砂災害にどう向かい合うかに正解はなく、事前に正解を得ることはできないので結果論のようになってしまうこともありますが、事前に防災計画をしっかりと練っておくことで、被害を軽減することができます。

参照記事
土壌雨量指数とは?土砂災害警戒判定メッシュ情報の判定基準となる指数


参考サイト▪︎国土交通省関東地方整備局「土砂災害について」▪︎気象庁「土砂災害警戒情報・土砂災害警戒判定メッシュ情報」