事前復興とは?災害復興グランドデザインとの関係について
災害は一度発生すると時に被災地に大きな被害をもたらします。阪神淡路大震災や東日本大震災のような大きな災害になると、地震で建物は全壊し、津波によって跡形もなく街が一掃されて行くことがあります。このような災害そのものの発生を止めることはできませんが、災害が発生した後に被害をできるだけ小さくするために事前に準備することはできます。その際には「事前復興」という考え方が参考になります。
今回はそんな事前復興について、そもそも事前復興とは何か、事前復興の具体的な取り組み、事前復興と災害復興グランドデザインの関係は何か、などについて書いていこうと思います。
事前復興とは何か
そもそも事前復興とは何かをひとことで言うと、平常時のうちから災害が発生した時のことを想定しておき、災害による被害が最小限になるように都市計画やまちづくりを推進することです。
日本は災害大国であり、毎年のようにどこかで災害が発生し、定期的に大災害と呼ばれるような災害が発生して、大きな被害をもたらしています。そのために、日本でまちづくりを考える上では、防災まちづくりという観点が必要不可欠であり、事前復興は意識をする必要があります。
被災した地域が復旧・復興を図ろうとした際には、自治体は複雑な手続きを数多くこなし、複雑な手順を踏んでいく必要があります。阪神淡路大震災の際にはそれが問題になり、その反省を踏まえて防災基本計画の見直しが行われて、事前復興という考え方が普及しました。
事前復興の具体的な取り組み
このように事前復興とは災害による被害が最小限になるように都市計画やまちづくりを推進することであり、具体的には下記の項目が検討されることが多いです。
木造住宅密集地域の問題
日本ではいたるところに木造住宅密集地域があり、この地域では木造住宅が密集しており、狭い道路で街が構成されています。この地域では災害が発生すると大規模火災などで被害が拡大する可能性が高いと言われています。
木造の建物が密集しているために延焼が発生し、建物が倒れてくることで広が潰される可能性も高くなります。この問題を解決するために住宅の耐震化・耐火化を進める必要があります。
また、道路の拡張も重要です。地震や風水害によって建物の倒壊が発生した際に、道路が封鎖される場合も想定され、被災者が逃げ場を失う可能性があります。
そのために災害によって建造物が倒壊する危険性が高いエリアにおいては、道路拡張を図り、建物倒壊による道路封鎖が発生しにくい都市開発を行う必要があります。
防災拠点の整備
そこまで大きくない災害であれば、災害対応を細かく行うことができる可能性が高いですが、東日本大震災のような大きな災害や、今後発生することが予測されている首都直下地震や南海トラフ地震では、細かく災害対応を行うことは物理的に難しいです。
そのために災害が発生した最初の段階では、地域コミュニティで災害救助、初期消化活動、負傷者の応急手当てなどを行う必要が出てくるかも知れません。
そのために市町村内の各地域に防災拠点を設けて、食料や消防道具など必要物資を備蓄しておくことも考えられます。
事前復興と災害復興グランドデザインの関係
事前復興は防災まちづくりを考える上で重要な考えですが、まちづくりを考えていく上ではマクロ的な観点に立って、災害に強い「災害復興グランドデザイン」という対局的な観点から事前復興の取り組みを考える事が重要になります。
これには行政をはじめ、市民、民間企業、各種団体などの間で課題を理解し、まちづくりについて情報を共有していく必要があります。この取り組みを事前に広く公表しておくことにより、実際に大規模な災害が発生した際にも、復興について住民の合意形成が取りやすくなります。
最近では多くの都市において復興まちづくり模擬訓練が実施されており、マニュアル策定も進められています。
以上、事前復興について、そもそも事前復興とは何か、事前復興の具体的な取り組み、事前復興と災害復興グランドデザインの関係は何か、などについて見てきました。
災害が一度発生すると復旧・復興を図るのはなかなか大変ですので、事前復興の考え方を事前に持っておく事が大切になります。
参考サイト▪︎東京都都市整備局「首都直下地震に備えた事前復興の取組」