スネークライン図とは?土砂災害から避難するために

ひとことに大雨による災害と言ってもさまざまな災害があります。洪水もそうですし、浸水害もそうです。しかし、数ある大雨による災害の中でも一瞬にして人の命を奪い取るものに土砂災害があります。
土砂災害は大雨や地震によって、崖崩れや地すべりなどが発生することによって起きる災害です。そんな土砂災害から身を守るために避難をする必要があるのですが、土砂災害からの避難を見極めるツールの一つにスネークライン図というものがあります。
今回はそんなスネークライン図について、そもそもスネークライン図とは何か、スネークライン図の元になっている土壌雨量指数とは何か、土砂災害の特徴は何か、などについて書いていこうと思います。

スネークライン図とは何か

そもそもスネークライン図とは何かをひとことで言うと、土砂災害警戒情報を発表するための基準になるグラフのことです。気象庁では土砂災害の予報を出す際に土壌雨量指数(これについては次の章で詳しく述べます)というものを使うのですが、スネークライン図はこの土壌雨量指数と60分間積算雨量の2つをグラフ化したものです。

(土砂災害警戒判定メッシュ情報の判定の仕組み:気象庁HPより引用)
大雨が降った際に土壌雨量指数と60分間積算雨量の2つをグラフ化すると、このグラフのように、クネクネと値が推移していきます。このクネクネ具合がヘビっぽいことからスネークライン図と呼ばれています。
スネークライン図では、まず黄色の縦線 があります。これは大雨注意報の判断基準線であり、統計的に大雨警報の土壌雨量指数基準の1時間ほど前になります。
次に赤色の縦線がありますが、これは大雨警報の判定基準線であり、統計的に土砂災害警戒情報発表基準の1時間ほど前になります。
最後の紫色の直線と円を組み合わせたような線ですが、これは土砂災害警戒情報の判断基準線になります。「CL」などと表記されることもありますが、避難に必要な時間を考慮して、土砂災害発生の2時間前に発表されます。

参照記事
土壌雨量指数とは?土砂災害警戒判定メッシュ情報の判定基準となる指数

この土砂災害警戒情報の判断基準線を超えていくと、土砂災害がいつ発生してもおかしくない(または既にどこかで土砂災害が発生している)状態になります。そのために土砂災害警戒情報の判断基準線を超える前の段階で避難を完了させておく必要があります。
この土砂災害警戒情報の判断基準線(CL)にはRBFNと呼ばれるAIの開発に使用されている計算方法と同じものが利用されています。
気象庁ではこのスネークライン図をもとに、「土砂災害警戒判定メッシュ情報」と呼ばれるものをHP上で公開しており、土砂災害の発生危険性を視覚的に分かりやすく公表しています。

スネークライン図のもとになる土壌雨量指数とは何か

先ほど説明したように、スネークライン図は土壌雨量指数と60分間積算雨量の2つを軸にとったグラフです。そのために土壌雨量指数がスネークライン図のもとになります。
土壌雨量指数とはひとことで言うと、雨が土壌中にどれだけ浸透して溜まっているのかをタンクモデルという手法を用いて指数化したものです。このタンクモデルは、他の水害を予報する際にも活用されています。
大雨によって発生する土砂災害は土壌中の水分量が多いほど発生確率は高いことが統計的にわかっており、そのために土壌雨量指数は土砂災害の予報を行う指標として有効であると考えられています。

参照記事
土砂災害とは?斜面崩壊(崖崩れ)、地すべり、土石流などの災害

土砂災害の特徴

このように土砂災害を予報するためにスネークライン図や土壌雨量指数は有効なのですが、適切に土砂災害から身を守るためには、そもそも土砂災害の特徴について理解しておくことも大切です。
土砂災害はその特徴として、まず突発的に発生し、土砂や石が高速で流れ落ちるために一度発生すれば致命傷をもたらし、人の命を一瞬で奪うことがあげられます。だからこそ、土砂災害が発生する前に立ち退き避難をすることが重要です。
その他、目視による確認が難しく、どこでどれくらいの規模の土砂災害が発生するのか事前に予測することが難しいということも土砂災害の特徴としてあげられます。

このように土砂災害は発生する前に避難することが重要なのですが、実際の地方自治体の現場では、避難所を開設して避難勧告を出すのはそう簡単ではありませんし、いざ避難勧告を出しても土砂災害が発生しなければ、狼少年効果で人々が避難勧告に鈍感になる可能性もあります。
気象情報以外にも避難勧告を出すかどうか決める際に重要になる要素はたくさんあることも頭に入れておく必要があります。
しかし、だからといって気象防災の知識が役に立たない訳では決してありません。気象庁が公表している土砂災害警戒判定メッシュ情報をチェックし、仮に紫色になっていて、かつそのエリアに土砂災害危険箇所や土砂災害警戒地域がかぶっているようであれば、そこでは土砂災害が発生する可能性があります。
気象情報を防災にうまく活用するためにも、今回お話したスネークライン図や土壌雨量指数の考え方を理解しておくことが大切です。

参照記事
土砂災害防止法とは?その概要と解説について


参考サイト▪︎気象庁「降雨情報を活用した 災害発生危険度予測技術(土砂災害)」