浸水想定区域とは?洪水ハザードマップの基本的な考え方

洪水が発生した際にどのエリアが危険になり、どの避難場所に避難すれば良いのかなどが書かれたものとして洪水ハザードマップがあります。台風や大雨で洪水が発生しそうな際にはこの洪水ハザードマップを確認して、どう行動すべきなのかを確認することができます。
その洪水ハザードマップを作成する際には「浸水想定区域」がどこなのかを検討します。浸水想定区域を指定することで、河川が決壊した際に浸水するエリアを計算することができます。
今回はそんな浸水想定区域について、そもそも浸水想定区域とは何か、洪水ハザードマップは浸水想定区域を元にどう作られるのか、洪水被害を予測する便利なツールの紹介、などについて書いていこうと思います。

浸水想定区域とは何か

そもそも浸水想定区域とは何かをひとことで言うと、河川が決壊して洪水になった際に、浸水が想定される区域とその水深を想定して地図上に落とし込んだものになります。
この浸水想定区域は国や都道府県から公表されているのですが、浸水想定区域を公表することで、洪水による被害抑制や洪水発生時の住民の避難へと情報を活用することができます。
一般的に、浸水想定区域を作成するにあたって、まずは洪水を想定する河川を決めます。洪水を想定する河川は大きく、洪水予報河川と水位周知河川に分けることができます。洪水予報河川は流域面積が大きく水位の予測が可能な河川であり、水位周知河川は流域面積が小さく洪水予報を行うための時間的な余裕のない河川になります。
浸水想定区域を想定する河川を決めたら、次にその河川で決壊しそうな場所を複数想定します。次にその決壊しそうな場所が仮に決壊した場合にはどのエリアが浸水するのかを計算します。
最後に複数の決壊する可能性があるエリアの予測浸水域を重ね合わせれば、浸水想定区域が完成します。
浸水想定区域ではただどのエリアが浸水しそうなのかを地図上に落とし込むだけではなく、どのエリアは洪水によって家屋が倒壊しそうなのか、浸水した際にどれくらいの時間浸水が継続するのか、などについても合わせて公表しています。
洪水から避難する際には、平行避難や垂直避難など状況に応じて適切な避難の方法が異なりますが、これらの情報を組み合わせることで、最適な避難方法の選択に役立てることができます。

(浸水想定区域:国土交通省HPより引用)

参照記事
床下浸水と床上浸水の違い!それぞれの定義と対応方法

洪水ハザードマップは浸水想定区域を元にどう作られるのか

洪水が発生した際にどのエリアが危険なのかを地図上に落とし込んだものに洪水ハザードマップがありますが、この洪水ハザードマップは浸水想定区域をもとに作成されています。
市町村では国や都道府県が作成した浸水想定区域をもとに、洪水予報をどのように住民に対して伝達するか、洪水発生時の避難場所はどこか、浸水想定区域内にある要配慮者利用施設はどこか、などの情報を追記して洪水ハザードマップを作成します。
洪水ハザードマップにはその地域における洪水に対する情報がまとめて書かれているので、視覚的にもどのエリアが洪水時には危険なのかを判断することができます。
ただし、洪水ハザードマップを見る際には、あくまでこの危険エリアは想定の範囲でしかないということをしっかりと認識する必要があります。想定よりも大きな災害が発生する可能性は常にあります。そのために洪水ハザードマップでは浸水せずに安全そうだったけど実際には洪水で浸水するということもあり得るので注意しましょう。

参照記事
表面雨量指数とは?大雨警報(浸水害)の危険度分布の元になる指標

洪水被害を予測する便利なツールの紹介

洪水被害を予測するために国土交通省からは便利なツールを閲覧することができます。

国土交通省ハザードマップポータルサイト

ハザードマップを調べるにあたって便利なものに国土交通省ハザードマップポータルサイトがあります。
国土交通省ハザードマップポータルサイトには大きく「重ねるハザードマップ」と「わがまちハザードマップ」があります。重ねるハザードマップでは地図や写真に重ねてハザードマップを閲覧することができます。わがまちハザードマップでは市町村が作成したハザードマップを閲覧することができます。

国土交通省地点別浸水シミュレーション検索システム(浸水ナビ)

浸水想定区域を調べるにあたって国土交通省地点別浸水シミュレーション検索システム(浸水ナビ)も役にたちます。
このサービスはまだ閲覧できる河川のデータが限られており順次拡大予定とのことですが、洪水をもたらす予測破堤点が表示され、仮にそこが決壊した場合にはどのエリアが浸水するのかを時系列的に閲覧することができます。
以上、浸水想定区域について、そもそも浸水想定区域とは何か、洪水ハザードマップは浸水想定区域を元にどう作られるのか、洪水被害を予測する便利なツールの紹介、などについて見てきました。
浸水想定区域は洪水による被害を想定するにあたって土台になる考え方であり、洪水ハザードマップを作成する上でも重要になります。

参照記事
梅雨や台風の時期に特に注意すべき防災ポイントについて

参考サイト▪︎国土交通省「ハザードマップポータルサイト」▪︎国土交通省「地点別浸水シミュレーション検索システム(浸水ナビ)」